『ゴールデンカムイ』が“異色グルメ対決”を制する! 「マンガ大賞2016」授賞式レポート

 まず誰もが気になるのは、“エンタメ全部乗せ”な本作が、どのように誕生したかという点。実は、野田氏の曽祖父は日露戦争に参加した屯田兵で、ずばりその名も「杉元佐一」。いつか曽祖父に関わる作品を描きたいと考えながら、なかなか話が広がらず実現しなかったという。そこへ担当編集の大熊氏から狩猟を扱った小説を薦められ、「2つをくっつけちゃえばいいんだ」と考えたことが、『ゴールデンカムイ』誕生のきっかけになったと明かす。

 その小説に出てくる主人公の名前が、たまたま野田氏の過去作品『スピナマラダ!』のメインキャラと同名だったことも、連載を決める後押しとなった。大熊氏によれば、野田氏は「そういうサイン(予兆)を大切にする人」であるそうだ。

 さて、『ゴールデンカムイ』が他のマンガと一線を画する特徴といえば、アイヌの風習や生活道具、サバイバル術、言葉、伝承などがきわめて詳細に記されているところだろう。他にも20世紀初頭の北海道の様子、刑務所のような特殊な場所まで、迫真のリアリティをもって描写されている。

 これらは連載開始前から入念に準備が行なわれ、野田氏は「北海道を一周するくらい取材した」という。丹念に資料を読み込み、北海道アイヌ協会、網走刑務所からの協力も受け、さらにアイヌ語、アイヌ文化など各分野のスペシャリストにも細やかな取材を重ねた結果、これほどのリアリティが生み出せたのだ。描写に指摘を受けた部分は単行本で修正するなど、こだわりは徹底している。

 また、ファンから評価が高い“異色グルメマンガとしてのリアリティ”も、体当たり取材した結果であることが明かされた。作中の食事シーンでは仕留めた獲物の脳みそ、目玉、心臓など、あらゆるモノが無駄なく食されている。野田氏も連載にあたって猟師の狩りに同行し、鹿の脳みそを実食。これにはアイヌの血を引く猟師も驚いていたそうだ。「脳みそは味がないグミのような味」「生レバーは湯気が立っていてシャキシャキした食感」「アナグマも食べてみた」――軽く引いている取材陣をよそに、野田氏は楽しげに語っていた。

 もう一つ、この日の取材で印象に残ったのは、マンガ家と編集者の強い信頼関係だ。担当編集の大熊氏はマンガ家にアイデアを押し付けるのではなく、“ピッチャーの得意な持ち球”を求めるタイプ。新体操やロボコンなど複数の連載案があったが、その中で「野田先生に一番ハマっている、描きたくて、描いていてイキイキしている」テーマの作品として『ゴールデンカムイ』連載を進行させたという。

ゴールデンカムイ 7 (ヤングジャンプコミックス)

ゴールデンカムイ 7 (ヤングジャンプコミックス)

最新7巻は今月発売! 2カ月連続発行!! うれしい!!!

『ゴールデンカムイ』が“異色グルメ対決”を制する! 「マンガ大賞2016」授賞式レポートのページです。おたぽるは、イベント情報・レポマンガ&ラノベの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!