【実写映画レビュー】深刻な観念劇とド派手なドラゴンボールバトルが乱暴に同居!? 『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』

 もともとアメリカは、欧米からの移民によって開拓・建国された国であり、成功を信じて海を渡る多くの移民たちを受け入れてきた。貧しい者でも、頑張れば夢は叶う。それが希望に満ちたアメリカという国なのだ。アメリカがスーパーマンという異星人を受け入れるのは、国の良心であり、誇りであり、国家的理想の体現でもある。

 クラークの育った場所が、アメリカ国内では「ド田舎」の代名詞でもあるカンザス州というのも示唆深い。日本で言うところの、内陸の美しい里山。古き良き、牧歌的で美しいアメリカの象徴。クラークは勤勉で、道徳的で、人のいい農家の夫婦に育てられた。健やかに、それは健やかに。

 カンザスは、ミュージカル映画の古典『オズの魔法使』(39)で、ヒロインの少女ドロシーが住んでいた場所でもある。彼女が歌う『虹の彼方に(Over the Rainbow)』の歌詞は、一貫して前向き、無垢、一途だ。いわく「虹の彼方の空は青く、信じた夢はすべて叶う」と。

 希望に満ちた移民、健やかなカンザス、頑張れば夢は必ず叶うという信念。スーパーマンという存在が示すのは、楽天的なアメリカン・ドリームと、能天気な理想主義者としてのアメリカ人である。

 もうひとりのヒーロー、バットマンことブルース・ウェインは、シビアな個人主義者としてのアメリカ人だ。
 ブルースは裕福な家庭に育っていたが、幼い頃に目の前で両親を強盗に殺された過去を抱えている。人はどれだけ真面目に生きていても、出会い頭の野良犬に噛まれるように、工事現場から降ってきた鉄骨に潰されるように、何の因縁も理由もなく突然殺される。それがブルースの殺伐とした人生観である。

 法は、悪人によって善人が被る理不尽な災厄を防げない。彼が自らバットマンとなり超法規的に悪人を私刑に処すのは、そういうわけである。
 私利私欲にまみれた犯罪者が巣食うゴッサム・シティに育ったブルースは、人間をカンザスの農夫ほどお人好しだとは思っていない。劇中の言葉を借りるなら「敵になる可能性が1%でもあれば敵」と言い切る男なのだ。

 「自分の身は、法などに頼らず自分で守る」――そんな自己責任意識の高さが、現代アメリカの代名詞でもある「訴訟社会」や「銃社会」の根っこにあるのは明らかだ。バットマンもそれにならい、ハイテクスーツと物々しいメカで極限まで全身を武装する。

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