真島文吉『棺の魔王(コフィン・ディファイラー)』第1巻 敵も味方も熱くキャラ立つ! 久々に降臨した超正統派のファンタジー 

 まったく予備知識なしに読み始めた真島文吉『棺の魔王(コフィン・ディファイラー)』第1巻(ヒーロー文庫)。

 実は近年のラノベの定番「小説家になろう」発の商業出版ということで、今度はどんな異世界転生モノかと勘違いしていた。

 でも違う! この作品は、近年まれに見る超正統派のファンタジーなのである。しかも、世界観は鎧の騎士たちが闊歩する西洋中世世界をベースにしている。ゆえに、バトルが熱く燃え上がるのはいうまでもない。

 物語の舞台となるのは、灰色の雲と大草原に彩られた王国・コフィン。そこは「棺」の名で呼ばれる青い竜が空を舞い、人々がその竜を崇拝する地。人々は貧しくも平和な生活を営んでいた。

 だが、物語の開幕と共に、平和は脆くも崩れ去る。赤黒い翼を持った竜と共に銀色の鎧に身を包んだ大軍が山脈を越えて攻め寄せてきたのである。その国の名は帝国スノーバ。こうして、瞬く間に平和なコフィンは蹂躙され尽くすのである。

 そこまで十数ページ。いや、序章の部分で、なんだ、この作品は! と血潮が踊ってしまう。なぜなら、序章でいきなり始まるスノーバの侵攻を村人の視点で描き、現実の西洋中世さながらの血なまぐさい光景を描いているからである。

 冒頭は決して冗長にはならず、かつ濃厚に描いた後に、物語は侵攻から半年後へと飛ぶ。すでにコフィンは完全にスノーバの支配下に置かれているのだが、敗戦国の悲惨さはさまざまな手法で描かれる。

 まず、もっとも興味を惹かれるのは、瞬く間に一国を占領したスノーバ軍の姿。歳は15、6歳ほどの若い将軍と行動を共にする幹部は「二十代前半と思われる長剣を携えた女」「細身な体に似合わぬ、巨大な戦斧を軽々と床に立てている男」そして、「まるで娼婦のような肌の露出の多い衣をまとった少女」。

 正統派のファンタジーかと思いきや、敵方はRPGのパーティーのようなふざけた姿。なのに、コイツらはものすごく強く有能なのだ。

 降伏後の条件交渉に訪れたコフィン最後の王族・ルキナは、プライドを捨てきれないながらも、そんなふざけた姿のやつらに、屈服しなければならない。

「負け犬」と呼ばれるならまだしも「雌犬」とまで呼ばれ「ふさわしかろう」とまでいわれる。しかも、城下町を見渡すと、すでにスノーバからの入植者であふれている。しかも、本国でも忌み嫌われていた犯罪者まがいの連中……『冒険者』ばかり。

 もはや王族も誇りを保つことが苦しい光景。現実の歴史でも無数にあった、敗北し押し寄せる占領国の入植者たちによって次第に消されていく祖国。かつてそこには別の国があり、民がいたということ。コフィンもそんな亡国への道を辿ろうとしていた。

 だが、そこに1人抗う者がいた。かつてコフィンの戦役に参加し騎士の称号を与えられた流浪の英雄「フクロウの騎士」だ。

 抵抗の代償としてスノーバ軍は、「フクロウの騎士」を匿う村を襲い、村人たちを処刑することを決定する。しかも、ルキナをも同行させて。

 そして、目的地に到着した軍勢が見たのは、すでに皆が逃げ去った村と、そこに1人たたずむ戦斧を持った騎士の姿だった。たいまつに照らされて村人の行方を問われた「フクロウの騎士」は言い放つ。

「村を出て行った。彼らは隷属より誇りを選んだ。敵国には屈服しない」

 信じられない格好よさ! こうして物語は救国の戦いへと進んでいく。そこで描かれるあらゆるシーンは「燃え」である。何しろ、コフィンの側もスノーバの側も、あらゆる人物が自らの信念に従って行動していてブレることがないからだ。そして、最後の王女であるルキナも守られる側でなく、自らも誇りを持ち抗う気持ちを捨てない格好いい女性として描かれているのもポイントであろう。やっぱり、何か目的を持っているヤツらは魅力的だ。

「ヒーロー文庫」というレーベルの看板にもなりそうな作品。男子だけでなく女子にも、楽しんでほしいと思った。
(文=是枝了以)

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