タチ『双角カンケイ。』絵柄からは思いつきもしない愛憎劇が！　

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『双角カンケイ。 』（タチ／芳文社）

『桜Trick』で一躍人気を得た、タチ先生の新作『双角カンケイ。』（芳文社）が、ようやく単行本になりました。

　今回はストーリーマンガ形式で描かれる作品ですが、タチ先生の作品だけに今回もドストライクで百合です。しかも、百合でほんわか萌え萌えしているマンガじゃありません。

　絵柄はゆるふわな感じなんですけど、物語は一筋縄ではいかないんです。なんかちょっとホラーな雰囲気すら感じてしまう、重い作品になってるんですよ、これが！

　物語のヒロインは、うり二つな双子の姉妹、ひまりとあいり。ある日、あいりは、足をくじいてしまったひまりのかわりに、バイトに行くことになります。2人は両親以外はまったく見分けがつかないくらいですから、これ幸いと思ったのです。

　でも、これが事件の始まりでした。

　あいりは、バイト先の先輩・ちさきから人違いで告白されてしまったんです。

　人違いに気付いていないちさきを傷つけてはならないと思ったあいりは、ひまりならどう答えるだろうと考えた末に「まずはお友達から」といいます。

　でも、ここで大きな失敗が。あいりは、間違えて自分のアドレスを教えてしまったのです（今どきLINEじゃないんだな……というのは野暮なツッコミなのでやめましょう）。

　しかも、家に帰ってわかったのは、ひまりは、ちさきが好きな別の女のコの背中を押している最中ということ。これは、告白を代行しましたョ！　とは、とても言い出せない雰囲気になってしまいます。

　で、ここからがちょっと怖い！

　ちさきは、ひたすらメールに自撮り画像を添付して送ってくるのです。それも、入浴中の写真とかまで。いやいや、男女の間でも、いきなりこんなん送ってくるのは、ちょっとヤバ目の女なんじゃないかと警戒心が芽生えるでしょう。

　しかも、その後の展開はテンポがよいというか、ジェットコースターみたいです。だって、遊園地で初デートの後に、そのままホテルに泊まっちゃうんですから！　もちろん、タチ先生の作品ですから、ちゃんとキスまでやっちゃいます。

　こうして、あいりは本当のことを言い出せないままに、ちさきとイケナイ関係を深めていってしまうわけです。

　いやいや、絵柄はドストレートに萌え萌えしているし、掲載誌は『まんがタイム　きららフォワード』だからと舐めてました。どっちかというと、同じ芳文社の『週刊漫画タイムス』に掲載されていても違和感のない、重い話ではありませんか！　萌え萌えする暇などなくドキドキ感しかありません。

　可愛いキャラクターを描きながらも、読んでいる側にも、この愛は地獄のような憎しみに変わっちゃうんじゃないかという不安を感じさせまくる作品。続刊がどうなるのか、怖くて読めません……発売されたら、また手に取っちゃうんでしょうけどね。
（文＝大居候）