「社員が無能……」自主廃業を断念した太洋社への“冷ややか”な評価

2016.03.23

太洋社 公式サイトより。

 3月15日に出版取次・太洋社が自主廃業を断念し東京地裁に破産、即日決定されたことが大きな話題となっている。

 太洋社は2月5日に、取引先に対して自主廃業を通知し、債権者集会を開催していた。この決定を受けて、取引先の書店はトーハン、日販などと帳合の変更を進めていたが、断念した書店が次々と閉店に追い込まれる事態となっていた。

 そうした中、2月26日に大口取引先だった書店チェーン・芳林堂書店が破産。これによって約8億円の負債が生じたことで、自主廃業を断念するに至ったのである。

 多くの書店が閉店に追い込まれる一方で、全額回収の見込みが薄くなった出版社からは、半ばやけっぱちな冷静さが見て取れる。

 自主廃業決定直後の記事(http://otapol.jp/2016/02/post-5585.html)で「ホッとしていますよ」と語っていた老舗アダルト系出版社社長は、今回の事態にも冷静だ。

「途中でバンザイしちゃうんじゃないかと思ったけど、こうなったらなるようにしかならない。社員には4月以降の太洋社からの入金はないと思って仕事するように話していますよ。とはいえ、ウチが倒産するような大変な事態とは思ってません。ウチも含めて出版倫理懇話会に所属しているような出版社は、なんとかやりくりするでしょ」(同社長)

 さらには「トーハン、日販が潰れたわけじゃないから……」(同)という言葉も。昨年は協和出版販売がトーハンに吸収されたり、とにかく苦境が日常なのがアダルト系出版社。今回も、なんとか切り抜けられるという自信はあるようだ。

 ただ、太洋社に対して複雑な感情があるのも確かな様子。別の出版社社員からは「国弘さん(太洋社社長)もタヌキだからなあ……最初から自主廃業は無理だってわかってたんじゃないの?」という話も。他方では「昨年から、やばそうなので出荷を絞っていた」と話す出版社もあり、各々台所事情はまったく異なるようだ。

 太洋社破産の原因の一つとして、出版産業が縮小する中でトーハン、日販に優良顧客を奪われてしまったことは、多くのメディアが指摘している。これに対する出版社の見方は冷ややかだ。

「結局は、社員が無能だったってことですよ」(別の出版社社長)

 危機的状況にありながら、旧態依然とした会社の体質を改革することができなかった太洋社に生き残る道はなかったのか。

 なお、債権者集会の日程はいまだ明らかにはなっていない。
(文=ルポライター/昼間たかし http://t-hiruma.jp/

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