ピクサーの重鎮が語る! ピクサー展&『アーロと少年』を10倍楽しめる裏話

■『トイ・ストーリー』ではネジまで細部を追求

 続いて、実際の映画製作の話に移ると、まず語られたのは、ピクサーが「王様」だと考えている「ストーリー」についてだった。製作を始める際に、簡単なストーリーを説明する「ストーリーピッチ」というプレゼンテーションをするそうだが、日々の話し合いの中で、最終的にはまったく違う話になることもあるという。『レミーのおいしいレストラン』と『アーロと少年』がその例で、製作は大変だったと話すキャラハン氏。しかし、何かを変更する際の判断基準は、常にそのストーリーにどういうメッセージがあるかということに重きが置かれているそうで、ピクサーの社内には、全社員にリマインドするために、「Story is King(ストーリーは王様)」という言葉が、至る所に書かれてあるそうだ。

 そして、映画製作にあたり、とても大切なのはリサーチだという。「『レミーのおいしいレストラン』では、厨房に入って料理をしたり、『カーズ2』では、東京のレースシーンを作るために東京を巡ったりしました。映画のキャラクターが体験するであろうことは、なるべく自分たちも体験して、肌で感じるようにします」と語るキャラハン氏。『アーロと少年』では、ピーター・ソーン監督が都会育ちだったため、大自然を感じるためにワイオミング州に行ったという。キャラハン氏は、「こうして足を運ぶことによって、映画の中のシーンと現実の世界にあるものを、うまく融合させるための土台ができるのです。アートチームは、グランド・ティトンで、参考になるものを、なるべく写真に収めてきました」と話す。スタッフのこうした実体験が、作品が持つリアリティに繋がっているといえるだろう。

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 リサーチを終え、キャラクターを作るアートデザインのフェーズでも、多くの作業をするようだ。キャラクターデザインが確定した後、立体的にどのように見えるのかを確認していくため、「マケット」と呼ばれる彫刻を作っているという。このマケットはピクサー展でも展示されている。また、キャラクターと背景のバランスを決めるために背景を描いたり、背景とキャラクターのスケールが分かる細部の絵も用意したりするという。「たぶん、みなさんの目に触れることがないくらい、本当にたくさんの絵を描きました。『アーロと少年』では、アーロが食べる枝に付いた房の実まで描きました。スケールは何かがちょっとでもずれると観客が違和感を感じるので、一つひとつのディテールまで追求していきます。『トイ・ストーリー』でも、キャラクターのネジまで描きました。全員一緒ならいいのですが、キャラクターの個性を出すために、ネジの詳細まで決めたのです」とキャラハン氏は苦労を明かす。

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 ピクサーのこうした作業の細かさは、CG製作の段階でも現れており、『アーロと少年』において、SFX部門では雨のシーンを400ショットも撮影したり、シミュレーション部門では270種類の木々と植物を用意し、シーンに合った風を吹かすために、風の強さは15段階も作ったりしたそうだ。

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