誰もが当てはまる「血液型あるある」に出会うはず 空えぐみ『天野家四つ子は血液型が全員違う。』

 なぜか日本人だけが大好きな、血液型による性格診断。さまざまな意見がありますが、これは一種の迷信。科学的根拠などはないといわれています。でも、A型、B型、O型、AB型が適度な配分で存在する日本では、なんとな~く信じられているのが実情であります。

 空えぐみの新作『天野家四つ子は血液型が全員違う。』(集英社)は、そんな血液型別の性格の違いをネタにしたギャグ漫画です。

 物語の狂言回しである高校の化学教師・八代は、血液型による性格診断が、実は本当に当たっているのではないかと気になって仕方がありません。というのも、彼の出会った四つ子JKは、全員違うタイプの血液型だったのです。

 ちょ、ちょっと待て! これまでの医学の研究成果から、四つ子の血液型が全員違うなんてのはありえません。もし、そんな四つ子が存在するとしたら、医学の常識をひっくり返す出来事。いや、きっと姉妹には複雑な家庭の事情、あるいは、犯罪に類する何かがあるに違いありません。

 ええ、でもそんなことを八代は気にしたりはしません。だって、ギャグマンガなんだから。それはそういうものとして、気にせずに楽しむことに致しましょう。

 この天野家の四姉妹は、同じ環境に育ったにもかかわらず、性格が血液型によって分類される常識そのままに、違った性格の持ち主です。姉妹は、ギャルなのに真面目なA型の長女・あさひ、クールなB型次女・まひる、オープンなO型三女・ゆう、不思議系AB型四女・こよる、以上の4人。物語は一話完結方式で「挨拶の仕方が違う」「テスト勉強が違う」「留守番の仕方が違う」などなどテーマを決めて、血液型性格診断でよく描かれる性格そのままに振る舞う姉妹の姿を描いていくのです。

 例えば、食事の回で食べ放題に行った姉妹を観察するとA型長女はバランスよく。B型次女は、好きなものばっかりを、O型三女は、全種類のコンプリートを目指します。そして、AB型四女はといえば、原価の高い食べ物ばかりを狙って、元を取ろうとするのです。

 この回を読んだ時に、ギョっとしました。筆者はB型なんですが、食べ放題にいくと、ひたすら「これは美味い」と思ったものを何度も何度も食べ続けてしまうのです。きっと、ほかの血液型の人も「あれ、自分の行動を姉妹のどの娘かが再現している……」と思い当たるエピソードが登場するのではないでしょうか。

 実は、この作品がどうして面白いのか、ここではじめて理解しました。この作品は、自分の血液型のネタ楽しみつつ、ほかの血液型をちょっと斜め目線で笑うという読み方が正しいのです。

 すなわち「血液型あるある」を描き続けるギャグマンガというわけなんです。ですので、一人で読むよりも、何人かで回し読みしながら楽しむのが、もっとも元を取ることができる読み方でしょう。

 血液型ネタを愛する人には必読です。
(文=大居候)

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