『壁にメリー.com』(コバシコ) Twitterで社会的に殺される! 

『壁にメリー.com』(コバシコ) Twitterで社会的に殺される! の画像1『壁にメリー.com』『壁にメリー.com』(コバシコ) Twitterで社会的に殺される! の画像2(コバシコ/スクウェア・エニックス)

 コバシコ『壁にメリー.com』。

 そもそもタイトルがよくわからなかったのですが「かべにめりーこむ」だそうです。

「メリーさんの電話」といえば、さまざまなネタにされる有名都市伝説。夜中にかかってくる一本の電話。「あたしメリーさん。今ゴミ捨て場にいるの……」何度切っても、すぐに電話がかかってきて「あたしメリーさん。今あなたの後ろにいるの」となるアレです。

 そんなメリーさんが、小説家志望の青年ヨウヘイのアパートにやってきたのです。

 しかも、電話がかかって近づいてくるのではありません。21世紀という現代に併せて進化したメリーさんは、Twitterでリプライしながらやってくるのです。

 これは怖い! だって誰もが経験したことがあるでしょう。Twitterじゃあ、みんな個人情報は漏れないように気をつけながらやっているわけです。でも、空気の読めないリアルな友人・知人がリプライで個人情報を書いちゃって「ふざけんなョ!」ってなることがあるでしょう。いわば、このメリーさんの怖さは、Twitterで、実名を書かれたのと同じような恐怖なのであります。

 ともあれ、形は変えつつも「いま○○にいるの」という基本は崩さずにやってきたメリーさん。でも、彼女(?)は壁にめりこんで、外れなくなってしまったのです。

 こうして始まるメリーさんは、21世紀ならではの恐怖を教えてくれます。そもそも、ヨウヘイがターゲットにされた理由は、Twitterでは、殺れそうな相手を見つけるのが簡単だから。そして、殺し方も現代的で「Twitterに恥ずかしい発言をして、社会的に抹殺する」というものなのです。

 容赦ないメリーさんによって「女児は最高だぜ」とか「男児でも」とツイートされまくったヨウヘイ。ところが、フォロワーがわずか3人だったためか、被害はまったくないのでした。

 かくて、壁から出られないまま、そのまま妙な居候状態になってしまったメリーさん。

 Amazonで勝手に買い物したりして経済的に殺しにかかったりと、物理的な死よりも嫌な恐怖をジワジワと与えてきたりしてくれます。

 おまけに、パソコンを独占してネトゲを始めるあたり、こんなんが現れたら精神を病んでホントに死んでしまいそうです。

 そして、こうしたスタイルのマンガの必然として、闖入者は続々と増えてきます。セーラー服の霊媒師の少女が現れたかと思えば、トイレの花子さんもやってくるのです。でも、キャラクターが増えたところで問題が解決する方向にはまったく向かいません。

 そうしたドタバタ劇の中で、完全に迷惑な存在だったはずのメリーとヨウヘイが妙な共依存関係になっていくのが、本作のポイントです。ヨウヘイは、両親の反対を押し切って小説家になろうと一人暮らしをしています。そんな彼の小説をメリーはちゃんと読んで「面白いから、つまんね」と素直じゃない感想を述べてくれるんですから。

 いやいや、創作活動で糧を得ようと志す者にとって、素直に褒めてくれる人は何よりもありがたい存在です。こりゃあ、簡単に除霊して追い出そうとしたりはできなくなるのも当然ですね。おまけに、メリーさんが爆乳なんで、余計に追い出すのも困難になりそうな……。

 難しいことを考えずに、状況を楽しめる作品です。
(文=大居候)

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