鬼火あられ『帰宅戦争 帰りたいんだけど戦争起こしてもいい?』久しぶりに登場した正統派青春バカストーリー! 

 青春はバカがいっぱいいるほうがよいのです。

 ラノベレーベルの老舗「富士見ファンタジア文庫」から、第28回大賞受賞の冠と共にデビューした、鬼火あられ『帰宅戦争 帰りたいんだけど戦争起こしてもいい?』。

 受賞の理由は、一目瞭然。最近なかった、登場人物全員、学園を挙げてアクティブなバカばっかという楽しい青春物語なのです。

 物語の舞台となるのは、私立帝政高校。ここに入学した佐藤太郎は、ネトゲにはまっていて、入学早々から一刻も早く帰宅してゲームがしたいと思っていました。でも、この高校は、そんな自由を許したりはしません。なぜなら、帝政高校は部活動で青春を謳歌することが大正義だとされる青春バカ野郎が総勢1,000人あまりも集う学園だったのです。

 当然、入学から勧誘期間の間は大混乱の新入生争奪戦。単に推薦入学できるからと、この高校を選んだだけの佐藤にとっては、理解できない世界です。

 そして、もう一人。佐藤が偶然、下着姿を目撃してしまった同級生の椎名凜花も、この騒動から逃れたいと願っていました。彼女は、過去にアイドルとして知られた天才声楽家。でも、おしとやかなアイドルの時と違い、本性はけっこうガサツで暴力的。学園でもアイドルを演じているのは、耐えられないと思っていました。

 そんな2人が、なんとか部活動への参加を拒否して、授業が終われば即帰宅する手段として思いついたのが、帰宅部の設立です。

 そんなバカな? と思うでしょうが、面白いことが大好きな校長先生は、これを承認してしまうんです。ただし、まずは同好会扱い。

 帰宅同好会のメンバーが毎日、放課後の18時までに勧誘の手を逃れて校門を突破できれば帰宅部の設立を認めるというのです。

 期間は4月末までの約2週間。放課後、自分たち以外の1,000人あまりの生徒の壁を突破して、校門をくぐり抜けるという戦いの開始です。

 これまで、青春を描いてきたラノベやマンガで、さまざまな形で全校生徒が参加するバトルは描かれてきました。そんなお祭り騒ぎが開かれるなら、本気で参加しなけりゃ損をします。この時間の無駄遣いこそ、青春の特権……あれ、ネトゲをしたいだけのはずが、青春を謳歌しているような気も。

 そして、こうした物語にふさわしく、絶対に佐藤たちの校門突破を阻止するために、立ち上がるヤツらもいます。それが「帝政四天王」と呼ばれる、ものすごいヤツら。剣道部主将・伝説の二刀流ムサシ、奇術部主将・奇跡の創造者・マジック、茶道部主将・空間の支配者・乙姫、ラグビー部主将ほ乳類最強ヤマト。こんな二つ名をつけられて、喜んでいるなんて、とんでもない青春バカに違いありません。

 でも、奇術部とか茶道部とか、あんま役に立たなそうな気がすると思ったら甘いです。こうした、お祭り騒ぎでは、なぜか文化部が圧倒的に能力が高いのが伝統なんです。

 かくて繰り広げられる2週間にもわたる帰宅するための戦い。佐藤たちにも仲間は増えるものの、その戦いは困難を極めていきます。

 いやいや、そんな困難も青春の思い出であることは間違いないです。

 でも、こんなに青春バカに命を賭けるなんて。この高校、超偏差値高いか、勉学でもバカばっかなのか……とっても気になります。
(文=大居候)

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