『あの花』みたいな設定で描く意図は? 佐藤ミト『流れ星に願うほど僕らは素直じゃない』

 やたら押し出される純情メインの展開に、ちょっと引いてしまった。『流れ星に願うほど僕らは素直じゃない』は、火を発火させる能力を持つ少女をヒロインにした『春の包帯少女』に次ぐ、佐藤ミトの連載作品である。

 前作では、第1巻から凄惨な展開が衝撃を呼んだが、今回は別のベクトルで衝撃が走った。それは、気持ち悪いほどの純情と、青春群像を描こうとしていることである。

 物語の舞台は、山に囲まれた田舎町。そこで、一緒に育ってきた幼なじみの男女6人組。

 でも、その一人である少女・すばるは、子どもの時の事故でずっと昏睡状態のまま過ごしている。その事故の前に、結婚の約束をしていた北斗は、すばるを助けられなかったことを悔やみながらも成長していた。

 それぞれが、すばるのことで人生に枷を負っているように感じている青春。そんな時、すばるは帰ってきた。昏睡状態の身体から抜け出した魂だけ。

 みんなが成長していることに驚き、自分も成長する時に驚く、すばる。でも、すばるは改めて北斗のことが好きだと告げるのである。

 こうして、最初は信じずに、すばるのことが見えなかった別の幼なじみたちも、次第に想いによって、すばるの姿が見えるようになっていくのである。

 でも、それは新たな事件の始まりでもある。

 たった6人の幼なじみ同士。男女は同数。けれども、その中での恋愛が、3対3でうまく治まるはずもない。すばるが姿を現し、今でも北斗のことが好きと告げたことで、それぞれの恋愛模様は複雑になっていくのである。

 そう、一見、のどかな田舎町を舞台にした爽やかな青春群像に見える作品だけど、実態は前作以上に凄惨なのだ。だって、視点を変えた時に浮かび上がってくるのは、閉鎖的な田舎町の狭い人間関係で行われるドロドロとした恋愛模様なのだから。背景に描かれている学園は、それなりに人数がいるように見受けられる。となると、その中でいつまでも長馴染みの中で結束している姿には、逆に気持ち悪さすら感じてしまうのである。

 でも、これは作者がワザとやっているのではないかとも、思うのだ。

 すでにネットでは、指摘が見受けられるけれど、この作品の設定は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』に酷似している。この作品は、近年の青春群像の代表作なのだが、見れば『流れ星に願うほど僕らは素直じゃない』というタイトルも似せているようで、ここに何かの意図を感じざるを得ない。

 もしかするとこの先、青春群像と見せかけてトラウマになるような展開が待っていたりするのではなかろうか。佐藤ミトという描き手に求められているのは、一筋縄ではいかない群像劇なのだから、むしろそういった展開でなくてはならないような気もするのだ。

 青春なんて、すぐに終わりが来る、くだらないもの。

 このまま正統派の青春群像になるのか否か。続刊での展開に期待したいと思っている。
(文=是枝了以)

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