【劇場アニメレビュー】スタッフの張り切りで70分笑い通し……疲れた! でもまた見たい!!『劇場版 ミルキィホームズ』

1602_MHreview.jpg(C)劇場版ミルキィホームズ製作委員会

 はじめにゲーム『探偵オペラ ミルキィホームズ』ありき。これは2010年にPSPで発売された探偵アドベンチャーゲームで、11年には追加シナリオや音声再収録などを施した『同 1.5』が、12年には続編の『同 2』も発売されているが、このゲームを原作にTVアニメ化したものが『探偵オペラ ミルキィホームズ』シリーズである。

 シリーズとしての流れは、第1期『探偵オペラ ミルキィホームズ(10年)、単発特番『同 サマースペシャル』(11年)、第2期『同 第2幕』(12年)、第3期『ふたりはミルキィホームズ』(13年)、第4期『探偵歌劇ミルキィホームズTD』(14年)、そして今回の『劇場版 探偵オペラ ミルキィホームズ~逆襲のミルキィホームズ~』(16年)となっている。

 このアニメシリーズ、原作ゲーム同様“トイズ”と呼ばれる特殊能力が存在する架空の近未来都市・偵都ヨコハマを舞台に、ホームズ探偵学院に通う探偵志望少女たち“ミルキィホームズ”の活躍を描いたものだが、一方で原作ゲームがロマンティックな恋愛要素やシリアスな展開などもまぶした王道的存在であるのに対し、アニメ版は徹底的にギャグ、ギャグ、ギャグ! といったパロディも多く含んだドタバタ路線を敷いているのが大きな特徴ともいえよう。

 もっとも第3期『ふたりはミルキィホームズ』はスタッフを替えて、ギャグも抑えたシリアス展開になっており、また第4期『探偵歌劇ミルキィホームズTD』はシリーズ続編でありながらも、全体的にリニューアルをほどこしたかのような印象をもたらし、ギャグ要素も復活させてはいるが、第1&2期ほどのクレイジーさには欠けている。

 そして今回の『探偵オペラ ミルキィホームズ~逆襲のミルキィホームズ~』は、第1&2期のメイン・スタッフを再結集させているのだが、それは要するに「ドタバタ・ナンセンス・ギャグ・アニメとしてのシリーズ復活!」を意味しているわけで、シリーズ開始からのファンの期待を裏切らない……どころか、もはや「おはようからおやすみまでギャグまみれ!」のハイテンション・クレイジーな作品に仕上がっている!?

 ストーリーは、いつものようにミルキィホームズと怪盗帝国、そして警察の対怪盗事件捜査チーム“Genius4”との三つ巴の攻防戦から始まり、相も変わらずトイズを失くしたりとダメダメなミルキィの面々の前に謎の怪盗が現れ……といったものではあるが、起承転結などお構いなしといった暴走モードによる展開は、もはやストーリーなんてあるのかないのかわからなくなってくるほどのギャグギャグギャグギャグ一本道! 果たしてこの世界に「緩急」という言葉は存在しないのか? と恐れおののくほどのテイストに、見ているこちらの頭はただただウニになっていくのみ。

 実のところ、個人的にTVアニメ版のほうは毎週こだわって見ていたわけではなく、深夜起きているときにチャンネルを替えて、小さなモニターの中の美少女萌えドタバタ劇をほけ~と微笑ましく見守るといった程度のおつきあいだったのだが、今回は自分の体よりも確実にでっかい銀幕の大画面である。当然迫力も倍増し、またスタッフも久々の登板に張り切っているのが画面の端々からひしひし伝わってくるのものだから、TVのようにほけ~とは見ていられず、「もう止めて!……いや止めないで!」などと、何だか甘美な拷問を受けているかのような倒錯気分に陥ってしまい、上映時間およそ70分ほど、普段ならばもっと長くてもいいのになどと思うものが今回については程良いというか、エンドクレジットが終わって場内が明るくなった瞬間、何やら重く心地よい疲れに見舞われ、ただただ深いため息を漏らすのみなのであった……。

 第1&2期の監督で今回は総監督を務めている森脇真琴はTVアニメ『ドラえもん』(1979~05年/また監督を務めた89年の劇場版『ドラミちゃん ミニどらSOS!!!』は今も名作としてドラ・ファンの評価も高い)から、『うる星やつら』(81~86年)『それいけ!アンパンマン』(88年~)『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(96~04年)などそうそうたるギャグ・アニメの演出を担当しつつ、一方では『おねがい♪マイメロディ』(05~06年)や『ジュエルペット きら☆デコッ!』(12~13年)、そして3月公開の『映画プリパラ み~んなのあこがれ♪レッツゴー☆プリパリ』(16年)などKAWAII系の監督も務める才女だが、今回は監督の桜井弘明の個性もさりげなく発揮されているような気がする。

 彼の作品で初めて着目したのは映画『アキハバラ電脳組 2011年の夏休み』(99)で、このときの美少女萌えハイテンション描写と夏休み特有のノスタルジックモードの巧みな融合に圧倒されたものだが、そのセンスは『デ・ジ・キャラット』シリーズ(99~01)などを経て、『映画ジュエルペット スウィーツダンスプリンセス』(12/ちなみに森脇真琴は本作のエンド文字を、そして同時上映の短編『おねがいマイメロディ 友&愛』では監修を担当している)における、騒音寸前といったキャラたちのけたたましい乱痴気騒ぎ(さすがに子ども向けの作品でこの表現は失礼か?)にひれ伏すしかなかったのだが、今回『逆襲のミルキィホームズ』を見ていて即座に思いだしたのは、この『映画ジュエルペット』なのであった。

 そのせいもあってか、鑑賞中はさんざん脳内をかき乱された挙句、しばらく経った今、本作に抱いている印象は意外にも“懐かしさ”であり、それは『2011年の夏休み』を久々に彷彿させてくれるものでもあったのだが、それは一方で、こういったパワフルなハイテンション・ギャグ作品がここ数年どことなく少なくなっていることから不思議と醸し出されたノスタルジーなのかもしれない。

 とにもかくにも、疲れた……が、また新シリーズ始まらないかなと思ったりしている自分がいる(そのときは、またほけ~と見たいものだが)。 
文/増當竜也

【劇場アニメレビュー】スタッフの張り切りで70分笑い通し……疲れた! でもまた見たい!!『劇場版 ミルキィホームズ』のページです。おたぽるは、人気連載アニメ作品レビューの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!