大手書店にも経営危機のウワサが……太洋社の自主廃業をめぐり、日本の書店と出版社の苦難は終わらない

1602_taiyou.jpg株式会社太洋社 公式サイトより。

 出版業界で大きな話題となっている出版取次の老舗・太洋社の自主廃業。同社は所有する不動産などの資産を売却して現金化、売掛金の回収を進める方針を固めている。破綻を回避し、ソフトランディングしたことで業界への影響は最小限に抑えられたかと思われた。しかし、現実はそうはいかなくなっている。

 太洋社が大半を占めていた書店の多くが経営困難と判断し、閉店が相次いでいるのである。その理由は、太洋社が自主廃業にあたって取引先書店に求めている「帳合変更」が、うまくいっていないこと。帳合とは、書店から見て取引相手の出版取次会社のことである。つまり、書店側は新たに仕入れ先を確保する必要を迫られたのである。帳合先変更にあたって、書店側は取次に対して保証金を支払う必要がある。これがネックとなり、書店の閉店が相次いでいるのだ。

 12日には、茨城県つくば市の名物書店・友朋堂書店が運営する3店舗を閉店。14日には、鹿児島県鹿児島市のオタク書店・ひょうたん書店も閉店となった。それぞれ地域住民の文化を担ってきた書店の閉店に対する衝撃は止まない。さらに、熊本県熊本市のブックス書泉、愛知県豊橋市のブックランドあいむも閉店。太洋社自主廃業の煽りで、瞬く間に書店6店舗が閉店に至っているのである。

 さらに、新たに閉店するのではないかというウワサが飛び交っているのが、首都圏のターミナル駅周辺に多くの店舗を構える大手書店だ。

「この書店では、太洋社の自主廃業を受けて、トーハンに太洋社が担っていた部分の帳合変更を交渉したのですが、不採算店舗で未払いが発生していることを理由に断られたというのです」(出版社社員)

 この書店ではすでに、各店舗で新刊がほぼ入荷しないという状態。一時は支援先が見つかったとの話もあったが、不採算店舗の状況を見た支援先が、突如支援を拒否したという話も。いずれにしても、2月中の状況を見て、事業継続か閉店かを迫られる状況になっているという。なんとか持ちこたえてほしいものだ。

 また「首の皮一枚でつながった」と、ホッと一息ついていたはずの出版社の間でも不穏なウワサが流れている。太洋社では、自主廃業に向けて支払いのための財源を確保できるとしていたが、実際には資金が足りず「焦げ付くのではないか」という不安が高まっているのだ。

 太洋社は、売掛金の回収を急ぐと思われるが、そうすれば、今度は帳合変更と併せて多額の支払いを強いられる書店側の体力が持たないのではないかという話もある。

 2月8日に太洋社が行った説明会によれば、同社の取引書店は約300法人・約800店、売掛金は約47億円だという。出版社と書店双方の経営危機を回避しながら、自主廃業するための道のりは楽なものではなさそうだ。
(文=ルポライター/昼間 たかし http://t-hiruma.jp/

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街の本屋さんがなくなっていくのは寂しい

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