『非オタの彼女が俺の持ってるエロゲに興味津々なんだが……』(滝沢慧) 作者がエロゲー脳すぎて心配になる名作 

2016.02.16

非オタの彼女が俺の持ってるエロゲに興味津々なんだが……/滝沢慧

 カバー折り返しの自己紹介で「人生初エロゲは『ゴア・スクリーミング・ショウ』」と、いきなり読者が離れるようなネタを放つ、滝沢慧『非オタの彼女が俺の持ってるエロゲに興味津々なんだが……』。イラストを18禁でも活躍している睦茸が担当していることもあり、妙に話題を集めている作品だ。だって、カラー口絵が読者を勃起させる気満載なんだもの。

 もともと、この作品は第28回ファンタジア大賞受賞作なのだけど、おそらく作者の極めきったエロゲー脳が評価を受けたポイントだと思います。

 物語は、読者をすんなり世界に入れてくれる青春ラブコメ。エロゲ大好きな主人公・小田桐一真が、学園一の美少女にして優等生・水崎萌香に告白されて始まる物語なのです。

 しかも、告白の言葉が尋常じゃありません。

「私を──あなたのカノジョ(奴隷)にして欲しいの」

 さらに萌香は「“雌豚”のほうがよかった?」と続けます。いきなりの、いつ18禁に転んでもOKな恋愛ドラマのスタートであります。しかも、萌香は前から一真が、こういうゲームが好きなのを知っていて、男だから仕方がないとまで。すなわち萌香は、エロゲーが好きな男でも、それ以上に一真には魅力を感じて告白してきたんです。

 なんとも美味しいシチュエーションではありませんか。

 大人であれば相手の趣味が気に入らなくても、そこは割り切って恋愛なり結婚なりをするもの。お互いの趣味の領域には立ち入らないという不文律を持って。でも、若者2人の初めての恋愛ですから、そんなワリキリはできません。とりわけ、萌香は突っ走ります。

 翌日からリア充人生スタートして幸せな気分になっている一真に対して、いきなり制服のブラウスのボタンを外して、オッパイを触らせちゃうんですから。「えっちなゲームが好きなんでしょ?」と、一真がエロゲーが好きなんだから頑張ってる感を出す萌香は「私を調教して下さい」とまで言い出します。

 エロゲーみたいに短いスカートをはいたり、メイド服を着てみたり。一真が混乱している一方で、萌香はどんどん突っ走るのです。

 そんなラッキースケベの先をゆく幸福な展開が次々と押し寄せる物語。でもね、当たり前ですが萌香の間違った頑張りは、やがて2人の関係をぎくしゃくさせていくことになるんです。

 むしろ、2人の関係がビミョーになってからが物語の本題。果たして、本当に2人は相思相愛になることができるのか、最後の最後までハラハラが止まりません。

 まあ、最後は幸福を予感させながら終わるわけですが、問題は作者のあとがき。あとがきは、作者が自由に書いてよいページだと思いますが、作者が変態的な欲望の果てに、この作品を誕生させたことがよくわかります。

 この人は止まらぬ妄想を作品という形にすることができて、よかったなあ。ひとつ犯罪の芽が消えた……そんな気分になりました。
(文=大居候)

編集部オススメ記事

注目のインタビュー記事

人気記事ランキング

PICK UP ギャラリー