「父はこんなに野蛮じゃない」実在した反乱軍リーダーの家族が『コール オブ デューティ』を提訴

■“歴史上の人物”と表現の自由

 02年に67歳で戦闘中に戦死したジョナス・サヴィンビ氏だが、戦火が収まった今日でもアンゴラ国内での影響力はまだ根強く、一部では“神格化”がはじまっていると指摘するのは元BBCのアンゴラ特派員であるジャスティン・ピアス氏だ。

「BBC」の記事によれば、結果的にその志は遂げられずに反乱軍のリーダーのままであったサヴィンビ氏は、現役当時に魔女疑惑のある女性を生きたまま火あぶりにすることを命令したり、当時自身の立場を脅かす勢いがあったUNITAの外交官、チトー・チングンジ氏とその家族を秘密裏に暗殺した作戦の指揮を執ったとも言われおり、“神格化”するには疑問も多いということだ。

 例えばカンボジアのポル・ポト元首相や、ウガンダの“アミン大統領”など、血塗られた過去の経歴を持つリーダーたちはいくつもの映画やドラマに登場している。また、いわゆる“911”の首謀者であるといわれているオサマ・ビンラディンが11年に米軍の特殊部隊によって、殺害されたことが公表された後には、ビンラディンを銃殺する自作ゲームなどもいくつか登場している。いったん“歴史上の人物”になってしまうと、肖像権をはじめとするプライベートな権利を主張するのはたしかに難しいのかもしれない。

■ノリエガ元将軍の訴えは棄却

 実は『コール オブ デューティ ブラックオプス2』が訴えられたのはこれが初めてではなく、1980年代のパナマで軍事独裁政権を敷いたノリエガ元将軍もまた、同ゲーム内で自分をモデルにしたキャラクターが登場しているとして提訴し、14年7月に裁判を起こしている。

 ノリエガ元将軍は同作の中で誘拐や殺人を犯した凶悪な人物として描かれたと主張してアクティビジョン・ブリザードを訴えたのだが、米・ロサンゼルス郡地裁は同作の内容は「表現の自由」の範囲内にあるとして昨年10月にノリエガ氏の訴えを棄却している。この前例を考慮すれば、ジョナス・サヴィンビ氏の家族の主張もまた難しいものになるのかもしれない。

 しかしながら、現在のコンテンツ制作のクリエイターにとっては、これまで以上に肖像権を含む著作権に注意を払わなければならないことは、東京五輪のエンブレム問題などをみても明らかだろう。コンテンツもキャラクターも蓄積する一方であることから、チェックが行き渡らずうっかりしていると予期せぬ“パクリ疑惑”が持ち上がってくるからだ。そしてこのジョナス・サヴィンビ氏のようにまだ歴史的評価の定まっていない人物を題材にする際にもそれなりの配慮は必要なのだろう。
(文/仲田しんじ)

【参考】
・BBC
http://www.bbc.com/news/world-africa-35486651

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