【劇場アニメレビュー】章が増えた分ぎこちなさも? まだまだ浸っていたかった『亡国のアキト』の世界『コードギアス 亡国のアキト 最終章「愛シキモノタチヘ」』

1602_akito.jpg】『コードギアス 亡国のアキト』公式サイトより

 日本が超大国“神聖ブリタニア王国”の侵攻を受け、植民地化(日本は“エリア11”、日本人は“イレブン”と蔑称されるようになる)された後の世界を背景とした、壮大な陰謀と復讐のドラマとして多大な評価を得たTVアニメーションシリーズ『コードギアス 反逆のルルーシュ』(2006~07年)および『コードギアス 反逆のルルーシュR2』(08年)。そのスピンオフとして企画された『コードギアス 亡国のアキト』が、現在公開中の『最終章「愛シキモノタチヘ」』(16年)でようやく完結を迎えた。

『亡国のアキト』は、『反逆のルルーシュ』と『R2』の間の時期のヨーロッパを舞台に、神聖ブリタニア王国との攻防を繰り返すE.U.(ユーロピア共和国連合)のイレブンによって構成された特殊部隊ワイヴァン隊の運命を描いたもので、その中の主人公アキトと、彼の兄でユーロ・ブリタニア軍のシン・ヒュウガ・シャイング、ともにギアス(他者の思考に干渉する特殊能力)を持つ者同士の確執や、ワイヴァン隊の面々の連帯、そして彼らを戦場の使い捨てではなく、慈愛と覚悟をもって接する司令官、ヒロインのレイラ・マルカル(彼女もまたギアスの力を持っている)の苦悩などが描かれていく。

 以下は全5部作のサブタイトル。

第1章『翼竜は舞い降りた』(12年8月4日公開)
第2章『引き裂かれし翼竜』(13年9月14日公開)
第3章『輝くもの天より堕つ』(15年5月2日公開)
第4章『憎しみの記憶から』(15年7月4日公開)
最終章『愛シキモノタチヘ』(16年2月6日公開)

 本来は全4章として企画されていたが、製作途中で全5章に変更(各章の公開日を振り返ると、製作サイドの困惑ぶりが想像できる?)。

 たしかに本シリーズは1本およそ1時間の中編仕様ではあるが、第1章はともかくとして第2章を初めて見たときは、これできちんと完結できるのか? と不安に思うほど情報量が多く、ちとせわしない印象を受けていた作品でもあり、さらには途中から『反逆のルルーシュ』主人公のルルーシュまで出演してくるものだから、彼らがどう『亡国のアキト』に絡むのか興味津々ではあったのだが、結果としてはゲスト出演の域に留まっている。

 一方、ワイヴァン隊の面々の絆が深まっていくと同時に、それまで感情を露わにすることのなかったアキトの心境の変化、またそんな彼に興味を抱き始めるレイラなどが、第3章ではゆとりをもって描かれており、個人的にはここでようやくシリーズに感情移入できるようになり、おかげでクライマックスとなる第4章に対する鑑賞前の思い込みも並々ならぬものがあったのだが、事実、こちらの期待に応えて第4章は大いに盛り上がるものの、もともとそこで得られるはずであった完結のカタルシスが最終章へと持ち越されてしまう鬱屈感もなきにしもあらずで、では最終章はこちらの望み通りのカタルシスをもたらしてくれたかというと……。

 最終章「愛シキモノタチヘ」は、まさに第4章から連なるクライマックスのバトルを継続させながら展開していくのだが、その分、前後編の後編をいきなり見せられている感も強く、第4章を復習しているしていないの問題ではなく、1本の作品としてのリズムやテンポのバランスのぎこちなさが先に体感されてしまう。

 またドラマの後半はギアスの力に根差した神秘的なものへと流れが変わり、そのおかげで数々の謎は解決できるのだが、何だか『コードギアス』ワールドの中にいきなり『伝説巨神イデオン』が混入してきたかのような違和感は否めず、ストーリーとして「ああ、なるほどそうだったのか」といった感慨こそもたらされるものの、『亡国のアキト』というシリーズの完結を迎えることでのカタルシスは意外に薄い。

 こういった中途半端な印象を与えてしまったのは、やはり製作途中で1章増やすことになったため、総体的なバランスが逆に崩れてしまったからではないかとも思えてならない。

 つまりは起・承・転・結で進むべき全4章としてのリズムが、起・承・転・ケッ・ツとなってしまったかのような居心地の悪さ。

 1章分の尺が増えて、ストーリーはそこそこ語り切れてはいるが、映画としての体感満足度が微妙に損なわれてしまった。
(つまりは第4章まで見終えて、最終章に期待をかけている者に対して、「最終章はこれこれこうなったんだよ」と説明だけされて、話は分かったけど、では映画としてどうなのよ? といったジレンマ……)

 これなら当初の目論み通りに全4章でいくか、いっそさらに数章増やしてシリーズとしてのゆとりをもたせるかのどちらかだったような気もしてならない。

 実際、本シリーズは単なるスピンオフの域を超えた独自の魅力を形成できており、正直もう少し登場人物たちの行く末を見守っていきたいと願うほどのものにもなっていた。

 一方で、銀幕の大画面に映える戦闘シーンやさらには橋本一子の見事な音楽に支えられながら、テレビではなく映画館でこそ堪能できるものになっていただけに、もうここで終わってしまうのか……といった喪失感は、鑑賞して数日経った今も続いている。

 ……などなど書き連ねていくうちにハッと気づかされたのだが、要はまだ『亡国のアキト』を終わらせてほしくなかった、もう少し見たかったという、一ファンの身勝手な想いなのかもしれない。だからこそ、こちらが望んでいた(予想もしていた?)ラストが具現化されているにも関わらず、そこに至るまでの『コードギアス』ワールド独自のドロドロしたダークなテイストなどなどをもっと盛り込んでほしいといった、ないものねだりの感情ばかりが湧き上がってくるのだ。

 どうにもこうにも、もやっとした感情が全然収まらないので、今は第1章から第4章までのブルーレイをリフレインで見直し続けつつ、もう数日経ったらまた映画館へ最終章を見に行っているかもしれない!?
(最後にカミングアウトすると、ヒロインのレイラは二次コン的感覚でいうならば、実に理想的な女性像なのでした、私……)
文/増當竜也

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