50歳で黄昏れている場合か!『東京ラブストーリー ~After25years~』

1602_tokyolove.jpg『東京ラブストーリー』第1巻より。

 なぜか新聞までもが取り上げる話題となった「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)9号掲載の『東京ラブストーリー』の25年後を描いた読み切り『東京ラブストーリー ~After25years~』。読者の声はさまざまだが、連載が検討されているとのニュースまで流れている。それを踏まえつつ、落ち着いてレビューしてみようと思う。

 25年の時を経て、カンチの娘とリカの息子が将来を誓い合う仲になるという冒頭は、まあよい(リカの息子の名前がアフリカというのには「よくグレなかったな」と思わなくもないけど)。

 動揺したのは25年経って、カンチとリカの現在の姿である。カンチは40歳を過ぎた頃に脱サラし、郷里の中学校で民間人教頭に。結局、リカではなくさとみとの結婚を選択したカンチだけど、さとみは古着のリサイクルショップを経営して、それなりに上手くいっているのである。

 かたや、リカはといえばカンチと別れた後にシングルマザーになり、偶然見つけた農場の従業員を経て、今は千葉で農場経営者。稲刈り合コンなんてのも企画して大勢の人を集めているというから、相当のやり手である。

 ああ、みんな30代、40代と人生にいろいろあったけど上手くいっているんだな~と、ひとまずは納得した。でも、納得してもどこか割り切れない思いが残るのだ。

 この作品、ドラマとの印象がごちゃごちゃになっているし、その後も現在に至るまでバブル期を代表する作品として語られる。そのために、恋愛至上主義者どものチャラいマンガだと思われているフシがある。もちろん、全然そんなことはない。常識に囚われない女性に振り回される男性を描く書き手として、柴門ふみはもっとも優れた書き手だと思う。

 それでも、25年後の姿に違和感を感じてしまう理由。それは、カンチとリカが結局は、そこそこの幸せに落ち着いているからだろう。

 大手企業を辞めて、さとみに養ってもらった後に民間教頭の職を得たカンチ。偶然見つけた農場の従業員募集の張り紙に「子連れですが雇って下さい」と頭を下げて人生の舵を切ったリカ。多くの人が不満を抱えながら、必死に喰うために仕事ばかりの変化のない日常を送っている中で、自ら人生をガラリと変えた2人の姿は輝いている。それでも、何かが足りない。それは、2人とも、今いるところがゴール地点だと考えているように受け取れるからだ。

 グラフを描くなら、カンチとリカが同棲していた25歳の時を頂点に、右肩下がり。下げ止まってからは安定が続くというものになるだろう。とりわけカンチは、定年退職したら、さとみも呼び寄せて故郷で暮らすつもりであることを語る。すでに「終活」をも構想しているのだ。

 そのような小さな幸せで終わる人生設計には、どうしても共感ができない。果たして自分が50歳になった時に「ああ、いい人生だったな」と、黄昏を感じる人がどれだけいるだろうか。やはり、充実した人生というものは、いつまでも現役でなければならないと思う。

 もし、連載化となったら物語はどう転ぶのだろうと思いながら、そんなことを考えた。
(文=昼間たかし)

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