新人アニメーターの苦悩を描きつつ、ちょっぴりご都合主義じゃない? 花村ヤソ『アニメタ!』

1601_animeta.jpg『アニメタ!』(花村ヤソ/講談社)

 初めは何もできないへっぽこな主人公だけど、特異、稀な才能を持っており、それを次第に開花させていく……よくある王道的展開だが、マンガ『アニメタ!』(講談社)にも若干同じ匂いを感じる。ただ、舞台は異世界などではなく、アニメーション制作会社なのだが。

 主人公である19歳の女子・真田幸(通称ユキムラ)は、学生時代に偶然見たアニメ『パンナコッタ』に魅了され、アニメーターを志す。そして専門学校にも通わず、アニメ製作の知識ゼロの状態で『パンナコッタ』を製作した会社、N2ファクトリーを受験。

 アニメに対する愛だけは人一倍だが、技術が足りず、想いを面接で爆発させるも「専門学校に行ってからでも遅くないんじゃない?」といわれる始末。失意のまま帰ろうとしたときに、階段上から数枚の小銭が落ちてきたのだが、ユキムラは散らばった小銭の位置を一瞬ですべて把握。それを見た小銭を落とした男が、「アニメに命をかける覚悟はあるか」と問いかけるのだ。

 ここからはお決まりの展開というか、小銭を落とした男は『パンナコッタ』副監督、現在はアニメ監督を務める九条で、ユキムラを自分のスタジオに採用する。そして新人動画マンとして基本的な知識である原トレ(原画の線をなぞって清書すること)すら知らない、できないユキムラを、“紫色”のメモで励ますのだ。……紫色って、ガラスの仮面の「紫のバラの人」をイメージしたのかしら?

『アニメがお仕事!』(少年画報社)など、昔からアニメ製作を題材にしたマンガはいくつか出ているが、飛びぬけて人気を博したという作品は意外と少ない。TVアニメ『SHIROBAKO』のヒットでハードルが上がった感もあり、以前紹介した『凸凹アニメーション』(過去記事)は打ち切りになるなど、なかなか厳しい題材といえるかもしれない。

 しかし、作者の花村ヤソはアニメ業界で働いていたようで、出てくる業界話は作画に使う紙の種類や道具、用語だけにとどまらない。“原トレ1枚210円、1ヶ月の手取りは約6万8,000円”といった、お金の話もリアルだし(ちなみにユキムラは5日間で1枚しかかけなかったため、時給5円だと言われている)、線の描き方や動画の割り方など、専門的な話が具体的に描写されている。

 きっとこの先、何かをきっかけにユキムラの才能が開花していくんだろうな、と想像できてしまうが、九条が落とした小銭の話がどうアニメ製作に結びつくのか、それをどう展開させていくのか。九条とユキムラの関係はどうなっていくのか、そして2人はどんなアニメを作っていくのか? ストーリー自体も気になるが……筆者的には、より深いアニメ業界の闇の話も読みたいところ。

(文:森野たぬき)

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