【今月の不健全図書レビュー】『コミックアムール』2016年1月号　ホントに女子は、これでオナニーを？

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――東京都をはじめ、地方自治体の「青少年・治安対策本部」では、毎月“不健全図書”を挙げ、自主規制団体らと共に審議を行っている。この審議結果は毎回公表されるものの、審査過程での自主規制団体の声が顧みられることはほぼない。エロにせよ何にせよ、どこか尖った作品を大の大人が色々な立場から評価するという、そんな貴重な意見が無視されるなんてもったいない！　このコーナーでは、“不健全図書”に指定されたマンガなどを自主規制団体の声と共に紹介していきたい。つまり、クラウド・ファンディング（群衆による資金調達）ならぬ“不健全図書”クラウド・レビュー（群衆による批評）、はじまり、はじまり〜！

【今月の指定図書】

『コミックアムール』2016年1月号（サン・メディアレップ）

『コミックアムール』2016年1月号は、久々にやってきたレディースコミックからの指定図書だ。出版元のサン・メディアレップは、マガジン・マガジンと同じくいわゆるサン出版グループの一社。昨年9月の時点で両社は、合計で1年間に通算6回の指定を達成しております。でも、大丈夫なんです。たとえグループであっても。計算は会社ごと。だから6回には達していないのです。今回の指定で両社合わせて一年間で5回になっていますけど、マガジン・マガジンが2回、サン・メディアレップが3回と計算されます。巧妙な指定逃れと批判されそうですが、現在のところ東京都青少年課も「出版元が違うので、それ以上のことは……」と妙に物わかりがよいので、この恩恵にはあずかっておきましょう。

（以下、別記のない限り、【】内は「自主規制団体からの聴き取り結果」より引用）

　さて『コミックアムール』は伝統的な女性向けのエロマンガ雑誌。収録作で描かれるのは、男性向けのそれと同じく、現実にはあり得ない展開なのに、現実感が股間を刺激するハードなエロスです。そして、伝統的なレディースコミックでありますから、女性が興奮する造形の男女が、縛られたり、輪姦されたり、凌辱されたりしていきます。

　元来、性的なメディアには間口の広い筆者ですが失礼ながら股間はピクンともしません。

　付録のDVDには実写のエロ動画が120分も収録されているのですが、同じくです。きっと、これで興奮できる青少年はごく少数。とても、有害だとは思えません。

　それでも、指定該当とする意見では【全編にわたりセックスシーンであり、描写も卑わい感がある。DVDを付けるなら尚更、著しく青少年の性的感情を刺激するものである】【本誌表紙に「大人の女性のための愛の専門誌」とあり、明らかに内容が予測でき、青少年は手に取りにくいと判断できるが、器具の使用も多く、後半部分の絵は刺激的であり、成人マークを付けるべき】と、青少年への影響を懸念する声が挙がるのです。

　でも、指定該当と意見する人の多くも、どこか自分の発言に自信のないままポジショントークをしているように見受けられます。

　保留意見の中に【本誌に「大人の女性のための愛の専門誌」と銘打ってあり、内容もそれ相応で、読者層が絞られるはず。また、‘青少年が手に取りやすい状況にある図書類を対象に’ということを考えると、発行部数も少ないはずのものを指定する必要はないのではないか】と、混乱を正直に語っている人がいます。

　みんなエロいのか否か、青少年が興奮するのか否かに答えなど出せていません。何より「ホントに世の中には、これを読んでオナニーしている女性がいるのか……」と思っていたのではないでしょうか。

　こんな状況ですが指定非該当という意見は、ストレート。【絵も下手であるため、本誌自体には問題ない】とか【擬音が多いものの字が小さく、絵全体がゴチャゴチャした印象で、何を描いているのか分からないものもあり、卑わい感を感じられない】。いやあ「こんなんで、私は勃起できません！」と正直にいってるみたいで……意図せず聞きたくもない他人の性癖を知ってしまったような気分になりました。
（文＝昼間たかし　http://t-hiruma.jp/）

今月の自主規制団体の声
【出典】東京都青少年健全育成審議会「自主規制団体からの聴き取り結果」より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/667/667siryou2.pdf