『婚渇女子』(小林拓己) 帯の売り文句がインチキすぎる…

 お前ら人生の目的はなんなのだ……? 先頃、第1巻が発売となった「ヤングキング」で連載中の小林拓己『婚渇女子』第1巻(少年画報社)。

 単行本の帯に「行き遅れは生ゴミです。結婚を考え始めた女達に贈る婚勝バイブル!!」と、挑戦的な煽り文句を記す作品である。

 物語は、人生を夢に賭けている売れない漫画家・伊藤小夏と、恋も仕事も充実しているつもり(だった)、ファッションエディター・黒田芽衣子という2人のアラサー女子が、結婚を意識して右往左往する物語である。

 まず注目したいのは、2人のキャラ設定。どちらも男性視点では結婚相手として地雷でしかない。小夏はマンガ家を目指しているが、30歳を手前に芽が出ることもなく、家賃も払えず芽衣子のマンションに居候状態。それでも、マンガ家になることを夢見て描き続けているのはエロマンガ。かたや、芽衣子はファッションエディターだけあって高級ブランドを身につけて、オシャレに生きることを絶対とする女。当然だけれども、彼女にとっては男もブランド品のひとつに過ぎないのだ。

 小夏は30歳も手前で友達のマンションに居候しているあたり、相当人生が詰んでいる雰囲気。対して、芽衣子はちょいムカつくバブル景気的嗜好だが、居候を許しているあたり女神。なので、物語は2人の人生を対比する形で進んでいくのかと思った。

 でも、それはまったく違っていた。

 単行本の前半数話を使い描かれるのは、2人が人生の方向を決めることを余儀なくされていく姿であった。小夏は、ちょっとイケメン眼鏡な編集者に作品を褒められ、連載を約束されるも、すぐに話はホゴに。かわりに連載が始まるという女子大生の新人マンガ家に、年齢から才能までいろんな意味で敗北していることを実感させられ、完全に心が折れてしまうのだ。そして、彼女は長い髪をバッサリとカットして再出発を決意するのである。

 かたや、芽衣子は「自分は結婚できるけど、していないだけ」を自負して、彼氏もいるけど取材先で出会ったイケメンと寝るのも「楽しい」と思い、自分は人生を謳歌していると信じている女。でも、本命だった彼氏のプロポーズにも気づかず、浮気していることも知っていたと告白された上でフラれてしまう。

 こうして、物語は三十歳を手前にもう若くないことを思い知らされた2人の人生が迷走しまくる方向で描かれていく。

 でも、作品を通して読者が知るのは、いくら痛い経験をしても人生がガラリと変わることなんてないという事実である。実家に帰って見合いを進められた小夏は、相手の薄毛や贅肉に不満タラタラ。それでも、観念して結婚に逃げようとは思ったが、その贅肉野郎に逆に見合い話を断られるという結末に。

 かたやモテない男をバカにしようと婚活パーティーに参加した芽衣子は、参加男性がやたらと高スペックなのに驚き、愕然。それでも「婚活パーティーで出会った男と結婚なんて恥」などといろんな思いが渦巻いた挙げ句に、どの男からも指名されないという公開羞恥プレイを……。

 この作品、帯には「結婚を考え始めた女達に送る婚勝バイブル!」と書いてあるのですが、現在のところ読んでもまったく結婚できそうにない。

 おまけに連載作は「ヤングキング」。婚活している女がヤンキンなんか読むかッ!
(文=是枝了以)

婚渇女子  1巻 (コミック(YKコミックス))

婚渇女子 1巻 (コミック(YKコミックス))

行き遅れは生ごみとか、婚勝バイブルとか、煽り文句で女性は引きそう。

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