「姫乃たまの耳の痛い話」第30回

テレビに出て、有名になって、彼を見返して……アイドルを辞められない女の子が見続ける夢

――地下アイドルの“深海”で隙間産業を営む姫乃たまが、ちょっと“耳の痛〜い”業界事情をレポートします。

151231_himeno.jpg2015年はお世話になりました!

 とにかく有名になりたいんです。歌でもモデルでも、喋りでも、なんでもいいから。

 彼女は楽屋の鏡に向かって、慣れた手つきで髪を巻きながら、矢継ぎ早にそう言いました。その言葉にはもう、なんの感慨もなくて、彼女がこの言葉を使命のように、何度も頭の中で繰り返してきたことが嫌でもわかります。鏡越しに覗いた彼女の目は、漠然とした復讐心に満ちていました。

「アイドルはやめられない」と、小泉今日子も歌っていますが、地下アイドルの場合は意味合いが違います。

 ワンマンライブに何人動員できなければ解散。CDを何枚売らなければ引退。

 時に彼女たちは、こうして自らとファンに厳しい試練を課します(あるいは運営から課されます)。活動の終わりを可視化することで、活動を継続させるのです。その方法は地下アイドルという職業が、刹那的であることを明らかにします。およそ、いつまでも続くものではないのです。

 私自身も頭のどこかで、高校を卒業したら……、成人したら……、大学を卒業したら……、地下アイドルをやめようと思ってきました。“やめたい”気持ちと、“やめなければいけない”という、似て非なる気持ちの両方でもって。しかし幸か不幸か、その時期をことごとく逃したいま、過去を振り返ると、そんなこと言っていないで、やめることもできたのにと、しみじみ思います。地下アイドルは簡単になれるし、簡単にやめることができます。しかし、不平不満を漏らしたり、深夜にはずみで呟いたツイートを削除したりしながらも、多くの女の子たちが今日も地下アイドルをやめられずにいます。

 インタビューの終わりに、よく「なぜ女の子たちは地下アイドルをやめないのですか?」と聞かれます。私はその純粋な問いを前に、いつも、何度でも、とても困ってしまいます。「やめればいいじゃない」と言ってやりたくなる気持ちはよくわかります。そして、やめられない気持ちもまた、よくわかります。

 彼女たちの“理由”は、もちろん人それぞれです。その中でも、しばしば「有名になりたい」という言葉を耳にします。もう少し深く聞いてみると、その言葉の裏には「見返してやりたい」という、本当の理由がめらめらと揺らめいているのです。私は、まさにその理由を口にしていた冒頭の彼女を追いました。

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