BABYMETALの“メタルレジスタンス”を追う―お辞儀の深さが世界を変える。

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　2015年のBABYMETALの最大のトピックとして挙げられるのが、イギリスの世界最大級の音楽フェス「READING&LEEDS FES.」への出演。そこで話題になったのが、現在絶大な人気を誇るメタルコアバンド・BRING ME THE HORIZONのボーカル、オリバー・サイクスがBABYMETALのタンクトップを着用し、何万人もの観客の目の前に現れたこと。

　オリバーの身体には首までタトゥーが彫り込まれている。大勢の人々が熱狂し、その拳を向ける先にBABYMETALの文字がある。こんなにシュールな光景があっていいものだろうか。

　その後、彼はTwitterで愛犬にBABYMETALのTシャツを着させた写真を公式アカウントに飛ばし、「一緒にツアーしよう」と絡むくらい溺愛ぶりを発揮。オリバーは海外の音楽誌のインタビューでかつてドラッグ中毒であったことを明かし、自殺すら考えていたという。薬物とは全く無縁のBABYMETAL。現在は家族や友人やバンドのためにドラッグを断ち切ったというオリバー。住む世界がまるで違う両者がともに写真に収まり、仲良くフォックスサインを掲げることに希望すら見出してしまう。

　オリバーにはドラッグの代わりにトマトを薦めたい。リコピン常習者になってほしい。もはや破天荒がかっこよく見える時代は終わった。“お辞儀”がビッグミュージシャンの新たな伝説として刻まれる日はそう遠くはないだろう。

　そんなBRING ME THE HORIZONが開演前に流れていた、12月12日・13日に横浜アリーナで行われたBABYMETALの日本公演「THE FINAL CHAPTER OF TRILOGY」。そこで空手やカンフーなど武術のような振り付けが取り入れられた新曲が初めて披露された。

　空手は対戦の前に相手に対してお辞儀をする。その意味は、相手を信頼して首を差し出すことから来ていると言われている。新曲がまるでBABYMETALの姿勢を示しているようで、その戦いが世界規模に導かれていく物語に今後も目を離せない。

　BABYMETALの戦う相手はいつだって己自身だ。そこに勝敗は存在しないし、他者と比較しない。ヘミングウェイの言葉に「真の気高さとは他人より優れることではなく、過去の自分を超えることだ」とあるけど、まさにその通り。だからこそ、彼女たちが目指す“オンリーワン”には限りがないのだ。

　私は日々、YUIMETALを見倣ってイスを直す。トマトを食べる。お辞儀をする。深々と礼をすると、決まって向こうも礼を返してくる。そうすると信頼関係が成り立っていく。

　BABYMETALが掲げる目標“メタルで世界を一つにする”の一因として、この礼節は欠かせないものだろう。今年、世界を騒がせた事件としてフランス・パリのライブハウスでのテロ事件が挙げられる。真っ先にBABYMETALのことを考えた。海外の凄惨な出来事をいつも以上に生々しく感じてしまう。彼女たちもかつて行ったことのある国でのエンターテイメントの場における悲劇を、決して他人事とは思えない。

　ジャパニーズスタイル・OJIGI。それは相手を信頼して首を差し出すもの。こうしたBABYMETALの示す礼節が世界中に広まると、ひょっとしたら世界が変わるかも知れない。今までに“ありえない”出来事を連発してきた彼女たちだからこそ、まるで中二病の妄想にも聞こえる「世界を変える」だって決して夢物語には思えないのだ。

　私は生きるために目の前の世界を平和する必要がある。明くる日もお辞儀を続ける。何度も腰を折り、頭を下げ、また頭を上げる一連の動作をして、ようやくあることに気付いた。

　これこそが、真のヘドバンなのかも知れない。

（文／竹内道宏）

竹内 道宏（a.k.a. たけうちんぐ）ライター／映像作家
様々な媒体で音楽系、映画系、体験系の執筆をしている。監督・脚本を務めた映画『世界の終わりのいずこねこ』がイタリアのウディネ・ファーイースト映画祭に正式出品。現在、2枚組DVDとなり発売中。監督・脚本を務めた中学二年生男子によるリアル中二病映画『イカれてイル？』がユナイテッドシネマ・豊洲にて2016年2月6日から全国順次公開予定。

また、神聖かまってちゃん等の映像カメラマンとして約600本に及ぶライブ映像をYouTubeにアップロードする活動を行なっている。2013年2月以来、BABYMETALに心を奪われてしまいました。命ある限り彼女たちの活動を追いかけます！
たけうちんぐダイアリー（ブログ）→http://takeuching.blogspot.jp
ツイッター→https://twitter.com/takeuching

 
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