日本では“ずるすべり”を見せた『百日紅(さるすべり)』など 2015年、海外で評価されたアニメ作品!!

1512_kaigairace.jpg『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』公式サイトより。

 今年も数多くのアニメ作品が映画業界を賑わせた。日本のアニメの興行収入上位5作は、『映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』約78億円、『バケモノの子』約58億円、『名探偵コナン 業火の向日葵』約44億円、『映画 ドラえもん のび太の宇宙英雄記』約39億円、『ドラゴンボールZ 復活の「F」』約37億円。ディズニーの『ベイマックス』約91億円には及ばなかったが、それでも立派な数字と言えるだろう。

 さらに『ラブライブ! The School Idol Movie』『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』『ポケモン・ザ・ムービーXY 光輪の超魔神フーパ』などヒットをかっ飛ばした作品も多いが、その一方で出来はよくても話題にならなかった、興行につながらなかった作品も多い。そこで、今年海外の賞レースで健闘を見せつつも、国内の興行収入ランキングには食い込まなかった作品を紹介しよう。

■『ダム・キーパー』(トンコハウス)
 18歳まで東京ですごした後、アメリカに渡り、ピクサーの『トイ・ストーリー3』『モンスターズ・ユニバーシティ』でアートディレクターを務めた堤大介氏と、同じく両作でアートディレクターを務めた日系アメリカ人のロバート・コンドウ氏が監督を務めた『ダム・キーパー』。家族も友だちもいない豚の少年が、8時間に1度、歯車のネジを巻いて風車を動かし、汚染された空気をダムの外側に追い出す“ダム・キーパー”という仕事をするという、18分の短編作品となっている。

 15年1月に発表された「第87回 アカデミー賞」で短編アニメーション部門にノミネートされたが、惜しくも『ベイマックス』の同時上映作品『愛犬とごちそう』に破れてしまった。しかし、「ベルリン国際映画祭」や「ニューヨーク国際短編映画祭」をはじめとした、たくさんの映画祭に出品。「ニューヨーク国際子供映画祭」オーディエンス・アワード受賞、「サンフランシスコ国際映画祭」子供アニメ部門・ゴールデンゲートアワード受賞など、多くの賞を獲得した。

 全国で公開されることはなかったが、10月に東京糸井重里事務所が、同事務所運営のイベントスペース「TOBICHI2」にて、100円で上映を行った。「『ダム・キーパー』どこかで観られる機会ないのかな」「『ダム・キーパー』を観てみたい。温かみのある絵に惹かれる」といった声がいまだ見られるので、またどこかで上映されることに期待したい。

■『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』(Production I.G)
 杉浦日向子氏の小説『百日紅(さるすべり)』(筑摩書房)を、『クレヨンしんちゃん』や『河童のクゥと夏休み』といった、大人も泣ける作品を世に輩出してきた原恵一氏が映画化。父であり師匠でもある葛飾北斎の娘・お栄を主人公に、江戸の四季と自由闊達に生きる人々を描いた浮世エンタテインメント作品となる。

 お栄には今年、俳優・東出昌大と結婚した杏、北斎(鉄蔵)にはTVドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系)で人気を博す松重豊を起用。ほか、濱田岳、高良健吾、美保純など、キャストを声優以外で固めて話題を呼んだが、公開初週土日2日間の動員数は約1万2,600人、興収約1,700万円と、タイトルさながら“ずるすべり”を見せてしまった。

 ただ、「時代劇と、実写ではできない表現力の高い細部まで描かれた江戸情緒の世界観が融合していた」「登場人物や背景と、作中の浮世絵が相性よく馴染んでいる」など、観客の感想は評価が高く、実際「第39回 アヌシー国際アニメーション映画祭」長編部門・審査員賞を受賞。「第19回 ファンタジア国際映画祭」においては、今敏賞(長編アニメーション優秀賞)、セカンス賞アジア映画優秀賞、長編アニメーション観客賞と3冠を獲得した。海外評価が、国内の興行収入に直結しない最たる例といえるだろう。

■『Small People With Hats』(個人制作)
「アヌシー国際アニメーション映画祭」(フランス)、「ザグレブ国際アニメーション映画祭」(クロアチア)、「広島国際アニメーションフェスティバル」(日本)と並び、世界4大アニメーションフェスティバルのひとつに数えられる「オタワ国際アニメーションフェスティバル」(カナダ)。9月に開催された今年の同映画祭において、短編アニメーション部門で最高賞を受賞したのが『Small People With Hats』だ。

 同映画祭で、2007年の山村浩二氏『カフカ 田舎医者』に続く、日本人史上2人目の快挙を成し遂げた二瓶紗吏奈(にへい・さりな)氏。『Small People With Hats』は二瓶氏の、ロンドンの美術学校の卒業制作作品だ。「8カ月間、土日も休まず、すべて手描きで描き続けた。シュールで理解できないと言う人も多いけど、見捨てられている人々、忘れられてしまう人々を描いたつもり」と語るとおり、帽子をかぶった人物が、殺人など社会で起こる不条理な出来事を、シュールと皮肉を交え描いている。なお、6分51秒という短い作品だが、原画は数千枚(スーツケース3つ分)にも及んだとか。

 しかし、『Small People With Hats』で名誉な賞を受賞しながらも、国内ではイラストやアニメの仕事が見つからず、ビアバーでアルバイトをし、東京でひとり暮らし続けているようだ。アニメ業界、世知辛すぎる。

 年を明けた2月6日に発表される、“アニメ界のアカデミー賞”こと「(第43回)アニー賞」インディペンデント作品賞には、日本から『思い出のマーニー』と『バケモノの子』が選出されている。前者は監督賞と脚本賞にもノミネートされており、期待が高まるが、果たして『インサイド・ヘッド』や『I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIE』など、海外の強豪に勝つことができるだろうか。見事、作品賞に輝けば、01年の『千と千尋の神隠し』以来の快挙……って結局、ジブリかい!!

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男かと思ったし、萌えづらいのかも

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