『たんさんすいぶ』吹奏楽×青春部活×楽器擬人化!? シリアスでコミカルでハートフル!

『SAMURAI DEEPER KYO』や『CODE:BREAKER』(ともに講談社)で壮大な異能バトルを描き、アニメ化も果たしている人気マンガ家・上条明峰氏が、学園モノ、しかも吹奏楽部で楽器の擬人化という要素まで盛り込んだ作品を送り込んできた! 主人公の滝進太郎は常に無表情で人相が悪く、彼の感情が読めるのは中学時代からの付き合いの山田京作くらいのもの。ジオラマ作りが趣味という、細かい作業が大好きな進太郎だったが、ジオラマ部もない高校でそれ以上に楽しめる部活を探していた。吹奏楽部に入部を決めている京作について音楽準備室に行くと、何やら風変わりな雰囲気。アレ? まだ練習始まってないの? と思いきや──。

 ホコリを被って錆びついたまま眠っていたサックスが、進太郎には一瞬女の子に見えた。吹部の先輩にサックスの掃除を半ば無理やり頼まれるが、細かい作業が大好きな彼は、進んでその作業を引き受ける。夜を徹して夢中になって掃除をする進太郎は、楽器が女の子に見えるのは自分だけだと悟り、次第に幼い頃に楽器が人に見える、話もできると言っていたことを思い出す。楽器との出会いを機に再び音楽を始めた進太郎に与えられたのは、ウン百万円の価値があるという幻の歴史的名器「マークVI」。進太郎はマークVIと共に吹部で活動することになる。

 異能バトルから離れた作品を手がけてもなお、上条節は健在。主人公は無口・無表情でも、吹部のメンバーのキャラクターは皆個性的だし、マークVIもその愛らしさに反して口の悪い関西弁だ。同じサックスパートの宮城さんとのギクシャクしていたが、それを乗り越えていく過程のドラマには感動させられる。実は進太郎の兄は、世界が認めるサックスプレイヤー・滝幸太郎。この兄弟の間には昔、何やら一悶着あったようだが……? マークVIを巡って物語は進むが、進太郎の過去と現在が入り乱れ、シリアスとコミカルが混在するハートフルな作品に仕上がっている。特にマークVIの小さな一人旅の回にはほのぼのさせられた。

 吹奏楽を取り扱ったマンガやアニメで、ヒット作は少なくはないが、『たんさんすいぶ』はその中でも決して遜色ない出来。音楽はもちろん、友情や恋愛などの人間関係を軸に、あらゆる方向に展開していく。異能バトルはないが、音楽で火花を散らす新しい「闘い」をする物語と言えるだろう。あくまでマークVIのパートナーである進太郎だが、マークVIは「呪われた悪魔の楽器」と言われてもいる。果たしてマークVIの本当の姿はどんなものなのか? 擬人化しているからこそ描けるマークVIの変化にも注目したい。そしてマウスピースヴァージョンのちびっ子マークVIも毒舌で可愛らしいので必見である。ちなみに『たんさんすいぶ』とは、「丹波第三高等学校吹奏楽部」の略であって、「炭酸水」とはあまり関係がない(笑)。
(文/桜木尚矢)

たんさんすいぶ(1) (イブニングKC)

たんさんすいぶ(1) (イブニングKC)

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