『路地裏ブラザーズ』第1巻(石江八)猫が人間みたいに語りバトる妙な世界。

 石江八『路地裏ブラザーズ』第1巻(リブレ出版)を読んで、まず思い出したのは元少年、現オッサンたちが大好きな犬漫画の巨匠・高橋よしひろの一連の作品であろう。かつて「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載していた『銀牙 -流れ星 銀-』は「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)で続編『銀牙伝説WEED』『銀牙伝説WEEDオリオン』と続き『銀牙 ~The Last Wars~』が連載中。

 読者の多くが「高橋先生は人間じゃなくて犬」「このマンガは犬が描いているんだ」と思っているに違いない作品である。

 とにかく犬が人間みたいにバトルするし、感情豊かに語り合う。物語に人間があまり登場せず動物たちが語り合うという作品は、ままあるものだけど(恐竜たちが語り合う『恐竜大紀行』なんて作品もあったな)、動物でバトルする高橋イズムを継承するマンガ家というのは、なかなか見当たらなかった。

 この作品は、そんなオンリーワンな高橋イズムのリスペクトしまくっている作品といえるだろう。なにせ、人間が野良猫になってしまうというファンタジー要素を交えつつ、猫が人間みたいに語り合いつつバトルをするのである。

 物語の主人公・十倉鉄成は、不良に憧れる高校生である。なぜ憧れているかといえば、成績がよすぎて進学校に通っているため、学校には不良がいない。おまけに住んでいる街がよい人ばかりで、街を歩いていてもケンカを売られることすらないのだ。よって鉄成は、毎日コスプレみたいなヤンキースタイルで街を歩いているだけなのである。

 そんな彼は実は宇宙人の教師・二十里の偶然の魔法で、猫になってしまったのである。突然放りこまれた猫の世界は、それぞれの「シマ」すなわち公園などをめぐって猫が争う修羅の世界なのである。まるで不良高校に1人で乗り込んでしまったかのごとき状況になってしまった鉄成は、それにビビるどころか、感動の涙を流すのである(猫なのに)。

 おまけに鉄成が通う高校は、野良猫にエサをあげる親切な購買のオバチャンがいるのだけれど、猫の世界では猫狩りババアのいる場所として誰もが恐怖しているのだった。

 こうして、時に人間に戻る鉄成だが、クシャミをしてしまうとまた猫になってしまう状況に。その2つの世界で次々やってくるトラブルが描かれていくことになる。

 やたらと猫がタイマンを張ったりヤンキーマンガみたいな光景を繰り広げるのだが、ところどころで“猫が人間の不良だったらこんな雰囲気”みたいに擬人化して描かれるので、妙に感情移入がしやすいのである。おまけに、主人公が不良に憧れたり猫になったりと、人生がいろいろと波乱に満ちているクセに成績は学年トップだったりと、マンガならではのギャップが笑いを呼び起こすのだ。

 掲載元の「コミッククロフネZERO」は、ドラマ化された『サムライせんせい』をはじめ、このところ読み応えのある作品が揃ってきた配信サイト。今後のラインナップも気になる。
(文=昼間たかし)

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