そのストーリーをふりかえると、想像以上に本格的なハイファンタジーものとなっている。タンキリエ王国の2人の王子のうち、弟のネクロスは権力欲が強く好戦的であるがゆえに、兄王子より追放されてしまう。その復讐のため、ネクロスは黒魔術を習得し様々なモンスターを配下に加え、大魔神ネクラーガを復活させようと企む。その封印を解くために誘拐された姫を救うべく、8人の勇者が打倒ネクロスのために立ち上がった。
これが第1部「大魔神ネクラーガ」編のあらすじで、第1弾から第4弾で展開した。このストーリーからわかる通り、ネクロスとは敵のボス的存在の名だ。彼は、何度倒されても怨霊やロボットなどに姿かたちを変え、シリーズを通して登場。敵のボスにしてシリーズを象徴する主人公的存在として、存在感を放ち続けた。
その後も、20年後を舞台にした第2部「暗黒皇帝」編が5~7弾で展開。第8弾で展開した第3部「邪神クトゥルフ」編では、そのタイトルからも分かるように、ニャルラトテップ、ツァトガなど「クトゥルー神話」に出てくる邪神が、復活したスーパーネクロスとともに登場するなど、子ども向けのおまけ付き菓子にしてはかなりマニアックなネタが投入された。
■『ネクロス』を語るうえで欠かせないフィギュア
また、先にも述べた通り『ネクロス』のもう一つの売りが、温度で色が変わる温感フィギュアである。『ネクロス』にはカードのみならず、そこに描かれているキャラクターのフィギュアがおまけについてきたのである。この造形を手掛けたのが、原型師の故・内田茂夫氏(2015年に逝去)だ。
もともと玩具メーカー・タカラで、人形を取り扱っていた内田氏は独学で原型制作技術を会得。独立して最初に手掛けた仕事が『ネクロス』だった。
先述のあだち氏による80年代半ばは、すでにおまけの加工賃がおまけ付き菓子の製作費を圧迫し始めていた時代だという。そんな時代にもかかわらずフィギュアとカードをセットでつけることができたのは、内田氏がパーツを分割することなく、一発で型から抜くような設計をしていたためだ。
このように、クオリティとコストの両立を奇跡的なバランスで実現した『ネクロス』は、レッドカンパニーが手掛けたおまけ付き菓子の中で最大のヒットを記録。以降レッドカンパニーはアニメ、ゲーム企画も手掛けるようになったそうだ。
ちなみにステージを攻略しつつ、冒険を進めるという『ネクロス』の構造をベースにして生まれたのが、後のアニメ『魔神英雄伝ワタル』だったという。
また、レッドカンパニーのゲーム企画展開が、後に『天外魔境』『サクラ大戦』などテレビゲームの歴史的タイトルを生み出すことを考えると、『ネクロス』の誕生は現在までに至る日本のサブカルチャーのひとつの転換点だったとも言える。
子どもたちに本格ファンタジー&アナログゲームの魅力を伝授した!?『ネクロスの要塞』今昔物語のページです。おたぽるは、その他、ホビー、あだちひろし、ネクロスの要塞、バック・トゥ・ザ80’S、レッドカンパニーの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!
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