『帰ってきたウルトラマン』が戦っていた相手は、怪獣だけじゃなかった!! 必殺技が通じない人間が持つ差別意識

2015.11.30

『帰ってきたウルトラマン Blu-ray BOX』(バンダイビジュアル)

『帰ってきたウルトラマン』がブルーレイボックスになって帰ってきた。1971年~72年にTBS系で放映された『帰ってきたウルトラマン』は、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』に続く3代目ウルトラヒーローとして第二次怪獣ブームを巻き起こし、ウルトラセブンやウルトラマンが助っ人として登場する回もあり、ウルトラ兄弟という概念が生まれたシリーズでもあった。その一方、放映時には“帰ってきたウルトラマン”には名前がなく、初代ウルトラマンと区別するために便宜的に“新マン”と呼ばれていた不憫な一面を持ち合わせていた。そんな名前のないヒーロー『帰ってきたウルトラマン』は、特撮界に多大な足跡を残した脚本家・上原正三がメインライターを務めた作品としても知られる。

 上原正三は、『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』の初期ウルトラ三部作の企画&メインライターを務めた金城哲夫と同じ沖縄県出身。同郷で同世代だった金城に誘われる形で円谷プロに出入りするようになった。『ウルトラセブン』では「第4惑星の悪夢」などを執筆し、同じく『ウルトラセブン』の名エピソード「ノンマルトの使者」を書いた金城と共にマイノリティー側の視点をウルトラシリーズに持ち込んでいる。金城は1969年に円谷プロを辞め、日本返還を控えていた故郷・沖縄を拠点に活動するようになるが、上原は東京に残り、金城が去った後の特撮界で長年にわたって人気作品を手掛けることになる。『帰ってきたウルトラマン』の後、『秘密戦隊ゴレンジャー』を皮切りとする初期スーパー戦隊ヒーローを生み出し、『がんばれ!!ロボコン』『宇宙刑事ギャバン』『仮面ライダーBLACK』などの特撮ヒーローやアニメ『ゲッターロボ』『北斗の拳』ほか数多くの作品のシナリオを執筆し続けた。

 長いキャリアを誇る上原だが、その作家性が強く発揮された作品として有名なのが、『帰ってきたウルトラマン』の第33話「怪獣使いと少年」だ。ウルトラシリーズでも屈指の名作と評され、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち 増補新装版』(切通理作著、洋泉社刊)でも詳しく紹介されているが、事あるごとに触れておきたいエピソードである。それは「怪獣使いと少年」が差別問題を主題にしており、テレビドラマでこのテーマが扱われることは今なお非常に希だからだ。

「怪獣使いと少年」の舞台となるのは、工業都市・川崎市の河川敷。ビンボーそうな身なりの少年が廃屋で暮らし、ひたすら地面を掘っている。この少年を街の不良たちは容赦なくいじめる。少年を生き埋めにして頭から泥水を浴びせ、自転車で轢こうとする。凶暴な犬をけしかけ、炊いていたおかゆをひっくり返した挙げ句、足で踏みにじる。ゴールデンタイムの子ども向き番組と思えないほどの執拗なイジメ描写が続く。少年は怪しい超能力を使う宇宙人だと噂されており、少年が街で食パンを買い求めても「他の店に行ってよ」と断られるシーンもある。

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