眠ったままの企画が世に出る可能性を増やす──『東北ずん子』のプロデューサーが新たに手がける「クラウド出版」の可能性

1511_crowd.jpg「クラウド出版」公式サイトより。

 さまざまな企画の資金調達方法として、普及しつつあるクラウドファンディング。片渕須直監督作『この世界の片隅に』をはじめとして、クラウドファンディングで資金調達に成功して制作が進められている作品も増えている。

 そうした中、新たに「クラウド出版(クラウドパブリッシング)」というサービスが開始された。このサービス、出版分野に特化したクラウドファンディングかと思いきや、企画を世に問いたいクリエイターたちにとってハードルを下げるアイデアが盛り込まれていた。

 今回始まったクラウド出版を主宰するのは、小田恭央氏。東北応援キャラクター『東北ずん子』のプロデューサーも務める人物だ。

 今回サービスを開始したクラウド出版のシステムは、商業出版よりも同人誌に近い。商業出版の場合は、出版社に企画を持ち込み、編集会議を通す等々のハードルがある。対して、クラウド出版は企画者がお客さんと直接コンタクトを取って、企画に出資をしてもらい本を制作する。

 それならば、従来のクラウドファンディングのサービスと大差はない。このサービスが特徴的なのは、漠然とした企画に対して「やりたいことに対して、どれくらい資金を調達すればよいのか」を企画者が理解できるシステムを目指していること。

「企画を立ち上げるにあたって、見積もりが出せるシステムを準備中です。これまでのクラウドファンディングでは原価計算なども自分でやってから公開しなければなりませんでした。現在準備しているものは、ライトノベルならば200部で60万円くらい、オーディオドラマなら150万円くらいなど制作に必要な費用がわかることによるクリエイター側の利は大きいです」(小田氏)

 具体的に、さまざまなジャンルのクリエイターの利用が想定されている。イラストレーターがゲームや作品集をつくるために出資を募ることができる。また、雑誌が潰れて連載が終わってしまったマンガ家が続編を描くためにファンに出資を呼びかけることも可能だ。

 そうなると利用者は、ある程度知名度のあるクリエイターが優位。漠然と企画を考えているだけの人は利用がしにくいのかと思いきや、違う。クラウド出版の側で編集や印刷まで実費負担で面倒な部分はすべて、引き受けることも可能なのだという。

「出資を募るにあたって、イラストなどはあったほうがよいと思います。3~5万円程度は必要ですけど、それも代行します」

 ただ出版に限っただけならば、一種同人の延長にも見えるサービス。けれども、小田氏は「出版はあくまで出発点にすぎない」と話す。

「出資を募る企画に対して、クラウド出版を出発点に商業出版や、アニメ等々の企画を私たちが行うことも考えています。50万円でもすでに集まっている企画であることをプレゼンすれば、出版社なども耳を傾けてくれます。よい企画があれば自分たちが一緒にやりたいというのが、本音ですね」(同)

 クラウド「出版」と名付けられているけれども、その実態は漠然としたままクリエイター個人の中で眠っているアイデアを、どんどん世に送り出そうというものだった。

 現在、出資を求めている5つの企画はオタク向けが多いが、ジャンルにはこだわりはないという。もしも、個人で「俺のアイデアを世に出したい」と思っている人は、どんどん挑戦してみるといいのではなかろうか。

 作品をああでもない、こうでもないと批評するよりも、つくることのほうが絶対に楽しい。
(ルポライター/昼間 たかし http://t-hiruma.jp/

クラウド出版公式サイト
https://pub.fundee.in/

VOICEROID  東北ずん子 EX

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