前巻にて、主人公とヒロインが付き合わない。それぞれ、別の男女と恋人になるという衝撃的なクライマックスを描いた、野村美月『SとSの不埒な同盟』第2巻(ダッシュエックス文庫)。
巻末で続刊が予告されていましたが、ようやく発売になったのであります。
物語は、絵心も造形能力もないのに美術部に所属している主人公・真田大輝と、金髪と青い瞳の美少女・藍本ルチアの物語。この2人は美術部に所属しているフリをして、密かに「鑑賞部」すなわち、窓の向こうに見える男女を鑑賞する部活を結成しています。なぜなら、2人はドSな変態だからです。2人にとって、好きな相手が困っている姿はたまらないご褒美。首輪で繋ぎたいとか監禁したいとか、妄想は止まりません。
完全に「お前ら、付き合っちゃえよ」と思う趣味の一致なのですが、2人にその気はナシ。なぜならドSなので、相手がドSじゃ満足できないからなのです。性嗜好を除けばベストカップルな2人。でも、やっぱり付き合うことはできません。
前巻のクライマックスで、ルチアはドMな音楽の産休代替教員・暮林の告白を受け入れて付き合うことに。それを見た大輝は、やっぱりドMな窓子先輩に告白して付き合うことになるのです。
果たして、お互いドMな相手を見つけて収まるところに収まったのか? 続刊となる本作は、その直後からスタートします。
季節は夏、恋人たちが愛を育むには最高な季節であります。
デートを前に記される大輝のモノローグ。
「俺の窓子先輩へのSな妄想は加速する一方だった。首輪。蝋燭。監禁。薔薇の棘の鞭」
いやいや、付き合い始めた相手に妄想をしすぎ。というか、舞台が高校であることを考えると痛すぎる童貞の妄想という感も否めません。SMプレイは技術と信頼関係がないと一生残る傷がついたり大怪我をすることがある危険な大人の遊戯なんだよ!
一方のルチアも、Mな彼氏に小学生のような半ズボンをはかせる羞恥プレイとか、猿山の猿の群れに放りこむマニアックな妄想を。たとえ、どんな理想的な相手を見つけてもコイツら将来はプレイが原因の傷害致死とかで逮捕されそうな気がします……。
そんな読者の不安をよそに、2人ともコミュニケーション能力が高いのかデートは無難にこなせるはず。でも、最初から歯車がかみ合いません。すでに相手に嗜好を知られているルチアはともかく、大輝は映画を観た後に「手術シーンは血がドバっと飛び出て綺麗だった」と力説してドン引きされるのです。
こうして物語は全3話構成の1話を丸々使って、SがMと付き合ったのに上手くいかない様子を描いていきます。
読者はみんな予想しているでしょうが、S同士だから付き合えない2人が、どうやってS同士なのに付き合えることになるのか。その心情の変化が、今回のポイントです。2人の関係を近づける一つのキーワードになるのがSMの古典『悪徳の栄え』。いやいや、ラノベでこんなキーワードが出てくるのに、驚きますよね。
(文=大居候)
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