一部のマニアなジャンルかと思っていたTSモノが、一般作品でも、しごく当たり前になった昨今。単に性別が変わるだけではありきたりになってしまう中で、作り手は今までにないアイデアを求められている。そんな中に登場した期待作が、もこやま仁『百合な私と悪魔な彼女(?)』(KADOKAWA/角川書店)である。
「月刊ヤングエース」(KADOKAWA/角川書店)で絶賛発売中のこの作品。一言で説明するならTSと百合の融合。すなわち一冊で二度美味しいという大サービスな作品なのである。
物語のヒロイン・野々山やしろは、男性恐怖症なぴっちぴちの高校一年生。男性恐怖症だというのに、通っている高校は共学。どれぐらい恐怖症かといえば、背中に背負ったリュックが男子とぶつかっただけで失神……いや「し、死んでる!?」とまでなってしまうくらい。
この設定、冒頭でコミカルに描かれているけれども、日常生活が大変であろうことは容易に想像できる。というか、こんな女子が周囲にいたら男子のほうが痴漢冤罪とかに遭いそうで心配でもある。
さて、単に男性恐怖症なら、まだよし(よくないけど)。やしろは男性が苦手なのではなくガチで百合勢なのである。その原因は、幼いころにいじめっ子の男子から助けてくれた名も知らぬ女の子にキスされたこと。
その思い出を抱いたまま成長したやしろは、ガチで百合になってしまったのである。
察しのよい読者なら気づくだろうが、その高校にやってきた転校生・西園寺みことこそが、初恋の女の子だったのだ。またまた男子から助けてくれた、みこととの再会キス。マジで発情モードで味わう再会のキス。甘い香りの中で、キスの一歩先に……。いや、みことの股間には、財布とは違うなんだか固いものがあったのだ。
こうして明かされる真実。みことは、男の子なんだけどキスして男性ホルモンをいっぱい出さないと女性化が進んで完全に女の子になってしまうというのである。
むしろ、そっちのほうがいいじゃないか! とTS愛好者の半分くらいは思うんだろうけど、物語はそれとは逆の方向へ。キスしている瞬間をスマホで撮影されたやしろは、毎日みことのキスの相手をしなくてはいけなくなるのである。そう、みことはちょっと小悪魔な腹黒娘……いや、男の娘だったんである。
18禁でも、TSはレイプフラグという常識は変貌し、TSした側が責める作品も増えている。
この作品も、そうした嗜好の変化を敏感に感じ取っているのだろうか?
いやいや、小悪魔な男の娘に翻弄される女の子って、なんかいい。やっぱり目が覚めたら美少女になりたい! と、思う人もいるんじゃなかろうか。
ともかく、この作品のポイントは、学校行事などの隙間を縫いながら必死に2人がキスすること。しかも、妙に発情している雰囲気で描かれているのが一般作だというのに興奮してしまう。そして、クラスメイトに覗かれてしまうという定番の事件によって、巻き込まれてキスをしなければならない状況に追い込まれる女の子は増えていく様子。
TSかと思いきや、男の娘だし。おまけに百合まで取り込んでいるよくばり設定なのに、まったく破綻なく物語で読ませる本作。2巻以降の展開も大いに期待しているぞ。
(文=ピーラー・ホラ)
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