裁判官も「終わんないなァ」とボヤき始めた……CG児童ポルノ裁判第10回公判

2015.11.16

 11月12日、午後2時30分から始まったCG児童ポルノ裁判。この日も前回に引き続き検察からの被告人質問が続いた。

 この日も午後2時を過ぎたあたりから、弁護団は三々五々、法廷に隣接する待合室に集合。

 たまたま向かいの民事法廷が、なにやら労組が支援する裁判と、都教員の「日の丸・君が代」をめぐる裁判の予定らしく待合室に妙な空気が。決して「ぱよぱよちーん」などとは口に出せない。

 そして、法廷が開くとなぜか傍聴席は満員。警察大学校の研修のご一行が、多くの席を占めている。しかし、この一行は休憩時間に揃って退席。「児童ポルノ」というキーワードに惹かれて傍聴していたらしき人々も去り、最終的な傍聴者は7名ほど。

 さて、この日もひたすら繰り返されるのは、容疑の証拠となっているCGと参考にしたとされる写真。さらにCGのファイルの中にあったPhotoshopのレイヤーを提示して、参考とされる被写体の人物は誰か。何歳かという知識はあったか。参考にした写真。そのほかのスキャンして取り込んだ写真などをペンタブレットでなぞったことはあったか……というもの。

 もはや傍聴者はもちろんのこと、弁護団や裁判官までもが寝落ちしないよう妙な努力をしなければならない単調な作業が続いている。

 単調だが、時間のかかる作業についに裁判官から検察官に対して「(時間を)まいてください」「これじゃあ、終わらないなあ」という言葉が飛び出すほど。

 ひたすら同じような質問を問われ答えなければならない被告のTさんも疲労の色は隠せない。

 唯一幸運なのは、画像をまったく見ることができないため、いまいち話を理解しにくい傍聴者もようやくTさんのCGの複雑な制作過程を理解することができてきたことだ。公判後、そのことをTさんに告げたところ「私もPhotoshopを様々な方法で使う中で、このような制作の発想に至ったんです」と語ってくれた。しかし、その試行錯誤の末に生まれた技法を取り調べにあたった警察官は、まったく理解することがなかったのだという。

 この日も時間いっぱいを費やした公判。次回は丸一日を使って検察側からの質問を消化する予定。苛烈な睡魔との戦いも予測されている。

【CG児童ポルノ裁判・第10回公判 詳報】
※録音・録画禁止のため、取材時のメモ書きなどをもとに作成しております。一部不明確な箇所がある場合がございます。ご了承ください。

<午後14時40分開廷。まず三上孝浩裁判官が進行予定について検察官に注文をつける>

三上「本日は、また検察官からなんですが、画像1枚あたり15分くらいかかっています。ちょっとまかないと時間が厳しい」

<鈴木望検察官は、いつも通り淡々と答える>

鈴木「努めますけど……」

三上「もちろんわかってます」

鈴木「じゃ、今日は『聖少女伝説』の画像8から……」

三上「あ、あんまり早くやると速記が取れないから」

<急に早口になった鈴木検察官だが、改めて話し出す>

鈴木「これが画像8だとわかりますね」

被告「はい」

鈴木「モデル名は?」

被告「ミキとかマコとか」

鈴木「双子のモデルだということは知っていますよね」

被告「双子かどうかはわかりませんが、写真集に書かれていたのは覚えています」

鈴木「何歳くらいという触れ込みでしたか」

被告「覚えてません」

鈴木「12歳くらいという知識は」

被告「ありません」

<参考とした写真、レイヤーに含まれていた写真についても同様の質問が繰り返されていく>

鈴木「(Photoshopのレイヤーに含まれていた写真について)これは、なにかのインスピレーションにしたのですか」

被告「参考にしたとは思います」

鈴木「どのあたりを」

被告「どういうポーズを取っているのか。ヒジをついていると頭の中で想像するのに使いました」

鈴木「レイヤーに取り込んだ理由は」

被告「Photoshopの利点を生かして、切り替えてどのように見えるか確認するために取り込みました」

鈴木「横たわる姿の参考のためにですね」

被告「腕の状態を確認するためにです」

鈴木「線を描いてモチーフにしたことは」

被告「ありません」

鈴木「取り込んだこれをもとに作業したことは」

被告「加工したりはしていません」

<検察官が次の画像を示すが、三上裁判官が声を挟む>

三上「線はわかりますけど……だいぶ薄いですね」

壇俊光弁護士「モニターのコントラストだと」

山口貴士弁護士「えっと、歌門彩弁護人のやつだと見えるんですけど」

三上「ああ見えやすいモニタと見えにくいモニタがあるのか……えっと被告は検察官のところに行ってモニタを見て下さい」

<被告が検察官席のモニタで画像を確認する>

鈴木「今、見てもらいましたけど、これはペンタブレットの線ですね」

被告「はい」

鈴木「参考にしていましたか」

被告「はい」

鈴木「どのように」

被告「ですから、想像したポーズを実際に線に起こすときに骨格や肉の付き方を理解して輪郭線を描くためです」

鈴木「幾度も描くのがあなたの作業ですよね。学習するためになぞったということは、ないのですか」

被告「習作としてなぞったことはあるかもしれません」

鈴木「画像8で描いた女性は18歳以下に見えますか」

被告「それは私が描いた画像の人物が実在するということでしょうか」

鈴木「そうではなく、あなたの意見を聞いています」

被告「それはわかりません」

鈴木「大腿骨や骨盤の発達具合でも」

被告「はい」

<続いて画像9でも同じ質問が続いていくが、突然、山口弁護士が立ち上がり異議を申し立てる>

鈴木「この画像を見た人は18歳未満に見えるのではないですか」

山口「意義があります。意見を求める質問です」

「被告人は鑑定人ではありませんから……」

<鈴木検察官が言葉を止めて、なにやら資料を確認し始める。裁判官もそれぞれ資料を広げる>

鈴木「念のためですが、意見を求める質問は鑑定人に限られない……」

三上「え~、却下します」

鈴木「(画像9の被写体とされる)花咲まゆさんのことを知っている人はどう思いますか。あなたは、似せてつくったのではない」

被告「はい」

鈴木「花咲まゆをつくったのではない」

被告「はい」

鈴木「あまり顔を変えていないですよね」

被告「はい」

鈴木「それは変えられないのか」

被告「変えられなかった」

鈴木「それはどういう理由ですか」

被告「まったく架空の顔というのは描けなかった」

<休憩を挟み画像17まで質問が続くが、画像17が終わった時点で時間は16時25分>

三上「多少時間が過ぎてもよいので次、いけそうですか」

鈴木「16時半から次があるんですけど」

三上「あと5時間はかかりそうですよ。えっと今17までいったから」

山口「2時間で9枚」

三上「じゃあ、あと4時間じゃ終わらないなあ。次のが入ってるならしようがないけど」

<ついに、ボヤき始める三上裁判官>

三上「ハードな一日になるけどやるしかないよなあ。次回ですが当事者が可能なら16日ですが朝9時40分で。それで足りるかわからないけど17時を超えるわけにはいかないので、早くやりましょう」

<20分早めるだけで、間に合うのか微妙な空気の中で閉廷>

※なお、この裁判において弁護団はすべて手弁当でありカンパも求められている。
カンパ送付先:郵便振替「00120-3-419023 CG児童ポルノ禁止法違反弁護団」

(取材・文=昼間 たかし http://t-hiruma.jp/

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