同人誌印刷会社だけで最大90億円減収の予測も……オリンピックによる「東京ビッグサイト使用停止問題」の最新動向

 緑陽社をはじめ、同人誌印刷会社のうち数社も加盟する展示会産業の業界団体・日本展示会協会は、約2年間使用停止になった場合の経済的損失を危惧する。

「展示会というものは、一回途切れてしまうと同じ規模で再開することができません。100あったとすると70とか80になってしまいます。とりわけ、日本の展示会は“PR形”といわれていて、何度も足を運んでいただいてビジネスが成立していく、時間のかかるものです。ですので、3年から5年は続けて来場してもらえるよう考えています。海外に来場者を奪われてしまい、日本のさまざまな産業が国際競争力で負けることになってしまう可能性は高いのです」(同協会の桜井悌司事務局長)

 影響は直接的な部分だけはない。経済産業省が14年に発表した「展示会産業概論」では、07年の東京ビッグサイトにおける経済波及効果を掲載しているが、ここでは東京都内だけで経済波及効果は約4,600億円。約2万7,000人の雇用を創出し、約96億円の税収効果があったとされている。もちろんオリンピックによる経済効果も大きいが、展示会が途切れたことによるマイナス分を補填するだけの効果があるかは、わからない。

 日本展示会協会では、あくまで「2020年東京オリンピック開催には賛成」という前提で代替案も検討中だ。

 ひとつは東京ビッグサイトに隣接する防災公園に5万平方メートルの仮設施設を建築。そこにプレスセンターを設置するというもの。もう一つが、幕張メッセに7万平方メートルの仮設施設を建築し、展示会に利用するというもの。いずれもまだ検討中の段階にすぎない。

 東京ビッグサイトでは主催者と支援企業に対する説明会を開催した上で、11月6日まで施設を利用する意見を集約。11月末には回答する予定となっている。とはいえ、東京都や実行委員会から東京ビッグサイトに、確定したオリンピック関連の使用期間は通達されていない状況だという。

 コミックマーケットだけでなく、日本の産業そのものが発信力を失ってしまいかねない問題だ。だが、今回の問題を通じて広く知られるようになったのは、日本は多くの産業を持ちながら、展示会場の数も規模も極めて脆弱なこと。また、あらゆる産業において展示会が重要な商談の場となっていることも知られるようになってきた。にわかに騒ぐのではなく、ピンチをチャンスに変える方法はあると期待したい。

(文=ルポライター・昼間たかし http://t-hiruma.jp/

コミックマーケット 94 DVD-ROM カタログ

コミックマーケット 94 DVD-ROM カタログ

この先、コミケがどうなるのか……心配です

同人誌印刷会社だけで最大90億円減収の予測も……オリンピックによる「東京ビッグサイト使用停止問題」の最新動向のページです。おたぽるは、マンガ&ラノベ出版業界事情の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!