原中三十四『株式上場を目指して代表取締役お兄ちゃんに就任致しました〜妹株式会社』妹は可愛いけれど、設定破綻が甚だしくて惜しい! 

 記事のタイトルが書名だけで埋まってしまうので省略するしかなかった、原中三十四『株式上場を目指して代表取締役お兄ちゃんに就任しました妹株式会社』(ぽにきゃん文庫)。

 妹は可愛いけれども、設定破綻が甚だしい異色作である。

 物語は主人公・五條田譲が、妹株式会社を設立して妹たちと共に新たなビジネスを展開するものである。

 この作品中では、政府が景気対策のための新たな政策として「妹株式発行による会社設立に関する法律」というものを定めている。株式会社が株式を発行して投資家から資本を集めるように、妹株式会社では、会社に所属する妹(作中の描写では血縁がなくとも年上だろうが女子であればなんでもOK)に資本価値をつけて妹株式を発行し資本を集めるのだという。ここで読者が抱くであろう疑問を、物語の冒頭で譲にスカウトされるヒロイン・西森舞華も抱く。そんな株式を誰が買うのかと。

 ところが、物語世界では妹属性を持っているオタク男性が買うから成立することになっているのである。

 まあ、ここまではよい。でも、企業である以上は集めた資本で事業を行って株主に配当を行わなければならない。そこで行われる事業には、定番として考えられるものもあるが、一方で法律による制約もあると説明される。

 まず、女の子が妹資本になる時の三原則として、テレビ出演でメディア活動で報酬を受け取ってはならない。歌手活動は行ってはならない。芸能事務所などとマネジメント契約を行ってはならないということが定められているという。

 なるほど、ならばどういう仕事が妹株式会社には依頼されるのかと思いきや、地域の特産品を売り出す広告塔、地方B級グルメのイベント、ゲームの宣伝部長兼声優などなど……。

 それが記されているページに至ったとき、本を読む手が完全に止まった。三原則は、芸能と妹資本の切り分けのために存在していることが説明されていたのだが、完全に破綻していると思ったからである。

 そして、物語はさらに破綻を深めていく。

 ゲーム会社から妹資本を声優に使いたいという依頼を受けた譲は、こう返答する。

「うちの妹たちは声優じゃありませんから、上手な演技なんてできませんよ?」

 そうはいいながらも、仕事は受けて物語は続いていくのだが、やっていることは完全に芸能事務所。おまけに妹だから芸能じゃない。

 声優じゃないから仕事は受けるけど、演技は上手くないとか……完全に、ダメダメなアイドル事務所。仕事を舐めているとしか思えない。

 設定は破綻しているし、ビジネスを描いているのに主人公たちは「不完全な商品」しか売ることができないとか、作者はどんな気分で物語世界を構築したのだろうか……? 描くなら、もう少し芸能というものをリサーチしてから描けばよいのではなかっただろうか。

 確かに、登場する妹資本=ヒロインたちが頑張っている描写は可愛い。それでも、最後まで設定への疑問が消えなかった。次回作に期待。
(文=是枝了以)

じんじゃえーる! (HJ文庫)

じんじゃえーる! (HJ文庫)

可愛ければそれでいい! という人も結構いますよね

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