【実写映画レビュー】原作付き映画は映画ファン、原作ファン、どちらのもの? 改めて考えてしまう『俺物語!!』

 マンガ的・アニメ的なコメディ演出や芝居を生身の役者にそのまま託せば、「役者さんが突飛なキャラを演じてます感」が前面に出る。結果、フィルムのルックは9割がたテレビのコント番組っぽくなってしまう。
 セリフも然り。ストレートな理想論の主張や厨二っぽい箴言を生身の役者に言わせるのは、一般的には酷である。かなり注意深い演出、もしくは場の空気を書き換えるほど神がかった演技力が役者にないと、画面内の「なんちゃって感」が観客を白けさせる。
 無論、マンガと実写に表現形式上の優劣はない。しかし歌舞伎のセリフを現代劇で使えないのと同様、J-POPの歌詞がモーツァルトのオペラにフィットしないのと同様、マンガやアニメ原作の実写化は、よほど慎重にやらないと大事故が発生するのだ。

 もちろん、『俺物語!!』の制作陣がそれらをすべて了解済みで、「コントを目指した」のであれば、それもまた善し。確かに、鈴木亮平の猛男コスプレは完全にコント番組のそれだし、ドタバタシーンの多さにもコントテイストがにじみ出ている。いっそ1シチュエーション5分ほどのコント仕立てにして、1クール分の連作にしたら、コント番組の1シリーズとして成立するかもしれない。そういった意味で、本作が楽しく愉快な映画に仕上がっていることに異論はないし、その部分で高評価する意見には同意できる。
 しかし、OSを“笑わせること”に特化したコントフォーマット上では、湧き上がらせることのできない観客の感情というものがある。それが「泣き」だ。

 原作『俺物語!!』最大の美点は、「人間の到達しうる最高の理想」が目の前で実現されているという感動にある。猛男と凛子の超・超・超・純愛関係はこれ以上ないほど眩しく、美しく、一点の曇りもない。互いへの信頼度、愛の深さ、純粋さは芸術的な高みに達している。猛男と砂川の鉄の友情も同様だ。相手をリスペクトし、認め、思いやる。男なら誰もが「親友とこんな関係を築きたい」と願うに違いない。
 完璧にピュアな恋愛と、完璧にピュアな友情。それらを同時に追求し、「人間の到達しうる最高の理想状態」を読者に提示し、悦に入らせるのが『俺物語!!』という作品の真骨頂なのだ。

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