【実写映画レビュー】原作付き映画は映画ファン、原作ファン、どちらのもの? 改めて考えてしまう『俺物語!!』

2015.11.09

映画『俺物語!!』公式サイトより。

 かつて押井守は、原作を担当した某マンガの作中で「冗長な映画は、時として見る者に実存的思索をうながす契機となる」と主張した。要は映画があまりにも退屈だと、観客は「俺ってなんのために生きてるんだろう」などという哲学モードに入ってしまうということだ。
 それでなくても、自分の生理に合わない映画を観ている最中は、つい別のことを考えがち。筆者にとって実写映画版『俺物語!!』もそうだった。このレビューの内容も、8割がたは上映中に固めたものである。

 原作は「別冊マーガレット」(集英社)連載の同名作品。既刊10巻で累計450万部の大ヒット作品で、2013年には『このマンガがすごい!』(宝島社)のオンナ編第1位も獲得した。女性誌連載ながら男性ファンが多いのも特徴だ。
 映画版は原作コミックス2巻の途中までをアレンジした内容となっている。主人公は、とても高校1年生には見えない超巨体・ゴリラ顔の剛田猛男(鈴木亮平)。昭和な男気あふれるナイスガイで、女子にはまったくモテないが、スポーツ万能の人徳者。男子からの信頼は厚い。猛男の隣に住むイケメンの砂川誠(坂口健太郎)は対照的にモテモテだが、ふたりは幼なじみで親友である。
 ある時、猛男が街でナンパ男から大和凛子(永野芽郁)を救う。猛男も凛子も互いに一目惚れするが、ピュアすぎて相手の気持ちに気づかない。こうして猛男と凛子の織りなすウブなラブコメが展開してゆく。

 原作エピソードのどこを端折り、どこを改変し、順番をどう入れ替えたのかを、とやかく言うつもりはない。完結していない作品の一部を映画1本の尺に収めるためには、綿密な再構成作業が必要だ。簡単なことではない。
 凛子の性格や容姿が原作イメージと違う、などとつらつら語るのも野暮な話だ。原作の可憐さがないとか、妖精っぽくないとか、世間ずれしていないとか、私服がダサいとか、そのあたりはどうでもいい。線で描かれた絵を現実の俳優が演じるのだから、一致していなくて当然。筆者は粘着質の原作厨ではないので、そのあたりは納得している。
 いやいや、ことはもっと単純なのだ。マンガやアニメでしか成立しないことを実写でやるとサムい。この一点に尽きる。

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