城崎火也『女子寮の寮長になった俺は、ご当地女子と青春できるだろうか』濃厚な群像劇──方言女子たちとのラッキースケベも! 

 みんな方言女子って大好きですよね? 「標準語」と言い張る東京弁で話す女子よりも、方言女子は3割増しでかわいく見えます。

 ベテラン作家・城崎火也の『女子寮の寮長になった俺は、ご当地女子と青春できるだろうか』(ダッシュエックス文庫)は、各地の方言女子と、これでもかというほど楽しい青春を味わえる作品です。

 物語の主人公・五十嵐春人は生まれ育った浅草を離れて、実家からは2時間半かかる東京都のはずれにある若葉丘高校に入学します。

 当然、毎日通学するには遠すぎるわけで、男子寮に入寮することになります。ところが、今年の入寮希望者の男子は春人だけ。おまけに長らく寮生のいなかった男子寮は、彼が一歩足を踏み入れただけで、轟音を立てて崩れ落ちたのでした。

 いきなり高校生活がピンチ! でも話のわかる校長は春人に、寮長となり点呼などの雑務をする条件で、女子寮への入寮を許可したのでした。

 かくて始まる女子寮での青春グラフィティ。寮生は4人。お風呂が大好きな沖縄出身の真帆と、ボーイズラブが大好きな福岡出身の菜々美、大阪人まんまの言動とふるまいをする璃子。そして、誰もが振り返る黒髪美少女なのに一言も発せず出身地も語らない瑞貴の4人です。

 ま、4人の出身地域の配置から読者には、瑞貴の出身地は想像がつくでしょう。この娘、あまりにも方言がキツくて過去にバカにされたトラウマがあるのでした。おまけに、その秘密が明らかになり話すようになれば完璧美少女なのにドジっ子属性も。もう、萌え要素の大バーゲンセールではありませんか!

 そんな寮生活を描く物語は、ぐんぐん読ませます。なぜ読ませるか! それは、短い時間軸での出来事を濃厚に描いているからです。入学式の数日前から始まる物語は、瑞貴が美少女過ぎるゆえに生じるトラブル。璃子の悩みを解決するためのクラスメイトを巻き込んだ交流会。菜々美が狂喜乱舞する池袋へのお出かけなどを描いていきます。このあたりまで、だいたい数週間の出来事です。

 こうした学園青春グラフィティとなれば、一冊の間にひとつの季節は消費すると思ったのですが、まだゴールデンウィーク前のようなのです。その短い時間に、次々とトラブルが起こりそれを解決することで、主人公とヒロインたちの距離が近づいていく……。いわば、後々の人生で青春を振り返った時に思い出すであろうポイントを、ちゃんと押さえている。だから、読ませるのです。

 また、ハーレムっぽい雰囲気なのにハーレムっぽさを抑えて群像劇としている点も、読ませるポイントです。春人の中学時代の同級生で、2人が揃うとトラブルが起こるという浩輔、彼がぐっと惹かれるクラスメイトの亜沙子など、サブキャラもちゃんと立たせているんですよね。それによって「また、ハーレムかよ」とは読者に思わせない群像劇になっているんです。

 さらに、ハーレムとは意識させないくせに、女子寮生活のお約束・ラッキースケベは盛りだくさんです。風呂に入れば誰かが入浴中だし、下着姿に遭遇するのも必然。おまけに、大好きなクマのぬいぐるみのかわりに春人に抱きついてくるヒロインだっています。冒頭、校長は「トラブルが起きたときには即刻退寮してもらう」といってますが、とんでもなくトラブルが起きそうです。

 ともあれ超絶美少女が「わだし」とか「あんたぁ」とか、超絶な方言を話して妙にキュンキュンさせてくれる本作。おそらく続刊が予定されているのでしょうが、早くも次はどのような季節の物語が描かれるか期待させてくれる一冊です。

 ただ、一点だけ気になったこと。主人公・春人は浅草出身なのですが方言が描かれません。やっぱ浅草の人だから「コーヒー」を「こーしー」と発音したりするんですよね?
(文=大居候)

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