少し考えてみるとすぐに納得できるが、ビデオゲームの世界で飛んだり跳ねたり走ったりする爽快な“身体感覚”は、実際にそういうことができる健常者よりも身体障がい者の方々にとって、よりいっそうかけがえのない体験になっているのかもしれない。したがって、障害を抱えた人々にこそビデオゲームは必要とされているというのだ。
■障がい者がゲームを通じて社会参加し生活のクオリティーを一変させる
イギリスのチャリティー団体「SpecialEffect」は、ビデオゲームと障がい者の橋渡しに特化した活動を行なっている組織である。同チャリティのサイトに掲げられたスローガンは「ビデオゲームを楽しんで障がいを吹き飛ばせ(Beating physical disability to enjoy video games)」だ。具体的には、基金によって障がい者がビデオゲームを遊びやすくする環境整備や、機器の開発を行なっている組織である。
同組織はこれまでもパソコンやゲーム機を操作することができない障がいを持つ人々に焦点を当てて独自の機器を開発している。
脳性まひを患う9歳のセイダちゃんは、これまでは健常者の友だちがビデオゲームを遊ぶのを脇から羨ましそうに眺めるだけだった。そこでSpecialEffectは彼女のために大きなジョイスティックを開発。彼女の動作を分析して、快適な操作が行なえるようにアレンジし、各種のボタンも大きくして押しやすい位置に配置したのだ。
この特製のジョイスティックによって、現在セイダちゃんは『ディズニー インフィニティ』をプレイするのに夢中だという。彼女が目をキラキラ輝かせながらゲームを楽しむ写真が同団体のサイトにも掲載されている。ゲームを通じて新たな友だちもでき、これまでの生活が一変したのだ。今では自らを“ゲーマー”と称するようになったということだ。
「単にビデオゲームで楽しんでもらうことだけが目的ではありません。障がい者がゲームを通じて社会に受け入れられることや、生活のクオリティをガラリと変えることも目的にしています」と同団体のマーク・サヴィル氏は情報サイト『VICE』の取材に応えている。つまりビデオゲームを通じて障がい者が“主役”になることができるのだ。
■ビデオゲームは障がい者が積極的に“動ける”このうえない娯楽
SpecialEffectの支援で人生を大きく変えることができたのはもちろんセイダちゃんだけではない。現在35歳のITアナリストで大のビデオゲーム好きのアジャイもまた、自分の人生を取り戻すことができた障がい者の1人だ。
彼は難病の脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy)で徐々に腕の力を失い、17歳の時にゲーム機のコントローラが持てなくなってしまった。それまではコアなゲーマーだった彼は、病気によって強制的にゲーマーから“引退”を余儀なくされたのだ。そこでSpecialEffectは彼のためにアゴの動きと音声で操作できるゲームシステムを開発したのである。これによって彼は再びビデオゲームを趣味にすることができたのだ。また同団体のサイトでは目の動きでゲームの操作を可能にする「アイコントロール技術」でゲームを楽しむ障がい者も紹介されている。
もちろん、読書をしたり映画を観たりすることも有意義な時間の過ごし方だが、障がい者にとってビデオゲームは自ら積極的に“動ける”かけがえのない娯楽であるということだろう。
同団体はまた「GameBlast」というイギリスで最大の耐久ゲームチャリティーイベントを主催している。次回で16回目を数える「GameBlast16」は来年の2月26~28日に行なわれるということだ。
障がいを持つ方々にとって単に楽しみを得るだけでなく、人々との繋がりを育み、自信を取り戻し、人生をも変えることができるビデオゲームの持つパワーを、我々も今一度確認すべきかもしれない。
(文/仲田しんじ)
・SpecialEffect
http://www.specialeffect.org.uk/
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