【劇場アニメレビュー】新しい目線からのエピソードとサブキャラが光る『機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅱ 哀しみのアルテイシア』

【劇場アニメレビュー】新しい目線からのエピソードとサブキャラが光る『機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅱ 哀しみのアルテイシア』の画像1『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』公式サイトより。

機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』は“ファースト・ガンダム”こと『機動戦士ガンダム』のキャラクター・デザインおよび作画監督を務めた安彦良和が2001年から2011年にかけて同作をコミカライズした漫画だが、現在その中から“赤い彗星”ことシャア・アズナブル誕生秘話を描いたシリーズ前日譚ともいうべき『シャア・セイラ編』を原作にしたアニメーション4部作が、安彦自ら総監督を務め、発表され続けている。

 第1作『機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅰ 蒼い瞳のキャスバル』(今年2月28日上映)は宇宙世紀0068年(ファースト・ガンダムの舞台となる宇宙世紀0079年の11年前)、地球連邦政府からの完全独立を宣言しようとしていたスペースコロニー、サイド3のジオン・ズム・ダイクンが突如帰らぬ人となり、代わってザビ家が台頭していき、ダイクンの幼い遺児キャスバルとアルテイシアがザビ家と対立するラル家のはからいで地球へ逃れるまでが描かれていた。

 さすがにファーストのオンエアから時を経てのコミカライズ&アニメ化ということもあって、設定の変更がいくらか施されており、さすがにファーストのリアルタイム世代としては違和感がまったくないわけでもないのだが、おおまかなところでのザビ家の暗躍ぶりや、また各キャラの若き日の姿が見られるのはやはり楽しいところではある。
(まさかキシリア・ザビのヌードまで拝めるとは、夢にも思っていなかったが……)

 とはいえ、せっかくのシリアスなストーリー展開であるにも関わらず、時折80年代風の、あたかも『うる星やつら』のモブ・シーンでも見ているかのようなギャグ演出が要所要所にうかがえるのが大いに興を削がれてしまった。

 ファースト・ガンダムおよびその周辺の世界観は、海の向こうの『ゴッドファーザー』3部作にも匹敵する壮大なサーガとして成立する優れものである。
 特に『Ⅰ』の前半部の陰謀劇は、もはやメカ・アクションも不要ではないかと思えるほど濃密に描出されていただけに(もちろん後半のメカ・バトルも、それはそれで盛り上がるのだが)、ああいったギャグ演出の仕掛け人は、安彦総監督か今西隆志監督か、どちらなのか?
 いずれにしても、少しもったいない気がしないでもなかった。

 さて、10月31日からイベント上映されるシリーズ第2弾『機動戦士ガンダムTHE ORIGINⅡ 哀しみのアルテイシア』は、前作から3年後の宇宙世紀0071年、地球に脱出してマス家の養子となったキャスバルとアルテイシアの兄妹が、それぞれ名前もエドワウ、セイラと変えてひっそり暮らしながらも、やがてセイラを置いてエドワウが旅立っていくまでを描いていく。

 ファースト・ガンダムの中でも屈指の回想シーンとして名高いキャスバルとアルテイシアの別れが、ここではクライマックスに据えられているのが興味津々ではあるのだが、ただ、意地悪な見方をすると、その名シーンに向かって繰り広げられていく今回の趣向はいかなるものか?

 残念ながら結果としてそこに至るまでのドラマが前作に比べるとさほどインパクトをもたらすものでもなく(母の死など、エピソードとして重要なものも含まれてはいるのだが)、最終的には兄と妹の別れを再確認しただけといった印象も否めないのは、これまたもったいない。

 何よりも今回、キャラの中でもっとも心情が描かれていないのはエドワウ=キャスバルであり、彼が一体何を考えてマス家を去っていくのかに対しても、今ひとつピンとこないものがあった(もちろんファーストを知るこちら側としては先刻ご承知のところでもあるのだが……)。

 また今回からキャスバルの声優が、シャア・アズナブルといえばこの人=池田秀一になったのだが、正直まだ彼が声をあてるには、ここでのキャスバルは若すぎた。
 1作目の幼年期のキャスバルを田中真弓が好演していただけに、今回まで彼女が扮しても良かったのではないか。

 いや、さすがに無理があるか。ならば10代思春期を演じる若手声優をもう一枚キャスティングして、そしてエドワウがシャアと化していく、次なる第3弾から池田秀一にチェンジしたほうがスマートだったような気もするのだが、いかがなものだろうか?(シャアおよび池田ファンの感想を聞いてみたいところでもある)

 一方、セイラ=アルテイシアの藩めぐみは前作よりも年齢が上がった分、今回のほうが断然良く、役をわが物とし得た感もある。
 また今回、彼女の心理状況は巧みに描かれているので感情移入もしやすい。もしかしたら作り手側は今回、タイトルが象徴するように、一貫してアルテイシアの目線からキャスバルを描こうと挑戦していたのかもしれない。

 私自身、このシリーズでもっとも面白く見ているのは、ランバ・ラルとクラウレ・ハモンの絆、そしてランバとドズルの交流である。
 思えばファースト・ガンダムでも決して出番が多かったわけでもないのに、ランバ&ハモンの立ち振る舞いはファーストにおける戦場の非情かつエモーショナルな世界観を見事に象徴していた。
 また、ファーストでは他のザビ兄弟に若干お株を奪われた感もあるドズルではあったが、本シリーズでのランバにさりげなくも示し続ける男気などはたまらなくうれしいのであった。

 結局、今回は勝手知ったる兄妹の別れを再確認したこと以上の妙味はさほど感じられなかったのだが、ここを通過しなければシャア誕生のカタルシスまで行きつくことができないわけで、いわば『スター・ウォーズ』サーガの中でアナキン・スカイウォーカーがダース・ベイダーと化すエピソード3の通過点としてエピソード2を外せないのと同じ理屈と考えれば、それなりに納得もできることだろう。

 少なくとも前作のギャグ演出が影を潜めた分、私は今回のほうが好みではあった。

 そういえば、つい先日まで行われていた今年度の東京国際映画祭では“ガンダムとその世界”と称したシリーズ大特集を催していたのに、『THE ORIGIN』は1作目のみの上映だったのはどうも解せない。
 せっかくのガンダム最新作なのだから『Ⅰ』『Ⅱ』の併せ技で華々しくお披露目すればファンも喜んだだろうし、海外マスコミにも親切だっただろうに……。なにか大人の事情でもあったのだろうか?
(文・増當達也)

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