プレイ前の情報でゲームの楽しさが変わる!? ビデオゲームにも“プラシーボ効果”があった!

1510_dont.jpg『Don’t Starve』公式サイトより。

 小麦粉を詰めたカプセル錠など、実際には何の薬効もない錠剤でも、一説によれば3割から4割の確率で症状が改善するといわれている。この現象をプラシーボ効果(偽薬効果)というが、これがなんと現実の世界だけでなくビデオゲームの世界にも効果を及ぼしているという興味深い研究が報告されている

■実際には存在しないAIを実感する

 英・ヨーク大学で人間とコンピューターの相互作用を研究しているポール・ケアンズ教授は同僚の協力者と共に、21人のゲーマーにPC版のアドベンチャーゲーム『Don’t Starve』をプレイさせ、ビデオゲームの世界の中でプラシーボ効果が起り得るのかどうかを確かめる実験を行なった。

 この『Don’t Starve』は無人島を舞台にしており、タイトルの通り“飢えずに”サバイバルするゲームで、島の中で行動範囲を広げていくとランダムにマップが生成されてゲームが進展していく。1度普通にプレイしてもらった後で、2度目には「AI(人工知能)がプレイヤーのスキルを判断してそれに見合ったマップを生成する」という新機能が搭載されたことを伝えてからプレイしてもらったのだ。しかし実際はそんな新機能は追加されておらす、1度目のときとまったく同じゲームソフトである。つまり「実在しないAI」を「偽薬」に見立て、信じ込ませることでゲームプレイに変化が生じるかどうかを調べたのだ。

 そして2度目のゲームプレイを終えた参加者に話を詳しく聞いてみると、AIによるマッピング機能が搭載された(もちろん虚偽)2度目のゲームプレイのほうが、1度目よりも深くハマり込むことができて楽しめたと答えた者がほとんどだったという。しかしながらある者は、1度目よりは難しかったと感じ、ある者は易しかったと回答しており、難易度についてはそれぞれ感じ方が異なっている。

「AIはゲームの中で安全な環境を用意してくれて、食糧など必要なモノもプレゼントしてくれた」(参加者の1人)

「(AIのおかげで)マップを探索する時間が減って、そのぶん1度目よりゲームを楽しめた」(別の参加者の1人)

 このように実際には存在しないAIを実感しているコメントも記されている。いずれにしろまったく同じゲームであっても、事前に与える情報によって体験が異なってくることことが明らかになったのだ。とすれば、ビデオゲームをプレイする際にも、また違った意味でのプラシーボ効果が起り得るということになりそうだ。

■ゲーム好きは“最新型”の文字に弱い!?

 このほかに形を変えて別の実験も行なわれている。40人の実験参加者を半分に分け、同じく『Don’t Starve』を一方にはマップがランダムに生成していると本当のことを伝え、一方にはAIがマップを生成していると虚偽の情報を伝えてそれぞれ1度だけプレイをさせ、その後の感想を比較検証したのだ。

 そしてやはりこの実験でも、AIが搭載されていることを伝えられた参加者のほうがよりゲームを楽しんだ傾向が浮き彫りになったという。これらの研究結果は10月5~7日にロンドンで開催されたヒューマンコンピュータインタラクション研究学会「CHI PLAY」で発表され、ビデオゲームのクリエイターは新たなゲームの開発やテストの際には、このようなプラシーボ効果を考慮に入れる必要があることが指摘された。

 また、フロリダ州立大学の心理学者でビデオゲームの分野を研究しているウォルター・ブート氏は、これらの実験はプレイヤーの事前の期待が実際にゲームプレイ体験に影響を及ぼしている証拠になると語っている。例えば単純に最新バージョンであることが伝えられるだけでもゲームの楽しさに影響を及ぼすということだ。どうやらゲームやデジタルガジェットが好きな向きほど“最新型”の文字に弱そうなことが証明されてしまったような感もあり、時折自覚してみてもいいのかもしれない!?
(文/仲田しんじ)

【参考】
・New Scientist
https://www.newscientist.com/article/dn28319-placebo-effect-works-in-video-games-too/

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