ヅカヲタ女医の「アモーレ!宝塚ソング」第7回

真琴つばささま&檀れいさまが歌う「うたかたの恋」に 母性本能をくすぐる男性の“弱さ”を学ぶ

 愛のない政略結婚、また政治的な策略の中で疲れ果てたオーストリアの皇太子ルドルフ。そんなルドルフの前に清純な輝きをもって現れた男爵令嬢、マリー・ヴェッツェラ。互いに激しく恋に落ちたもののこの世では結ばれないと悟った2人が、オーストリア・ウイーン郊外の「マイヤーリンク」で悲劇的な死を迎えるというストーリーですが、このミュージカルのプロローグの部分で歌われる歌こそが、「うたかたの恋」です。

 ミュージカルの冒頭、幕が開くと、赤い絨毯が敷き詰められた大階段にルドルフとマリーが佇んでいます。「マリー、来週の月曜日、旅に出よう」と語りかけるルドルフ。「あなたとご一緒なら、どこへでも」と笑顔で答えるマリー。ここから歌が始まります。

 ルドルフ「濡れた草の中の青い小さな花 それはあなた それはあなた それはあなた」
 マリー「朝(あした)に夕べに森の梢にそよぐ風 それはあなた それはあなた それはあなた」
 ルドルフ「たとえ荒れ狂う嵐に引き裂かれようと 
 愛はさらにさらにさらに深く 
 たとえ雪の朝別れが訪れようと 
 愛はさらにさらにさらに強く」
 2人「君を熱く熱く熱く求め続け 愛は高く高く高く弾け
 はかなくも美しい束の間の恋 うたかたの うたかたの うたかたの……恋」

 2人が情熱的に歌い踊った後、2発の銃声が轟き、舞台は暗転します。このミュージカルは、2人が出会ってから、共にピストル自殺するまでのストーリーを描いた作品なのですが、死に至る前、父親や政治家たちの思惑の中でルドルフは四面楚歌に陥ります。もう少し狡猾に振舞って、要領よく自分の社会的立場を保つことだってできたであろうに……。不器用すぎる……!

 ルドルフはひたすら愚直に真正面から、マリーとの愛を貫く道を突き進みます。とにかく、ひたすら、マリーを大切にしようとします。『男の婚活マニュアル』でNGとして挙がっていた、「他人の服装や容貌を貶めるような内容のネタで笑いを取ろうとする」「飲食店で店員さんに横柄な態度で接する」みたいな「なんとなく性格が曲がっていそうでイヤーな感じの人」的な振る舞いとはかけ離れています。まっすぐすぎるほどまっすぐなルドルフ。ただ、ちょっと弱すぎる感じもありますが、それも女性の母性本能をくすぐる方向に働き得るのでしょう。それは、儚さという魅力につながっているのです。

 ミュージカル冒頭のこの曲でも、ルドルフのまっすぐかつ清冽な愛情がシンプルな言葉で表現されているといえましょう。宝塚100周年の記念CD『Congulatuations! ! TAKARAZUKA 100th Anniversary Disc』や、CS局『Takarazuka sky stage』におけるタカラジェンヌがジャズを歌う番組から製作されたCD『JAZZ ON TIME Vol.2-TAKARAZUKA-』でもジャズ風にアレンジされて収録されているほか、某男役トップスターさまも、ご自身のカラオケの18番として挙げておられました。ちなみにその男役トップスターさん、カラオケではマリー、つまり娘役のパートを歌うそうです。ぜひ拝聴したいものです!

 また余談にはなりますが、wojoが敬愛する宝塚ファンのお姉さまは1990年代後半、ルドルフが好きすぎてマイヤーリンク周辺を旅し、マリーのお墓に行ったところ、歌詞にあるような「青い小さな花」の造花が一輪、お墓の傍に添えられていたそうで、「宝塚ファンが置いたに違いない!」と興奮しながらおっしゃっていました。もし本当にそうだとしたら、本物のマリーのお墓にまで宝塚でのイメージを投影してしまうあたり、恐るべしですね、宝塚ファン。言い換えれば、それほどまでにこの「うたかたの恋」は、宝塚ファンに深く愛されているということになりましょう。

 話を戻しますと……女性が好む正統派二枚目って、どこか弱さが見え隠れしている気がしませんか? そして、決して威張ったり見栄張ったりせず、ある程度正直に自分の気持ちを言葉にするような気がします。そういえば『男の婚活マニュアル』でも、男性がとるべき言動として「女性に対して会いたい、会えて嬉しいという気持ちを、素直に言葉にして伝える」が推奨されていました! やっぱり! 素直で正直者であることが大事なんですね! だったら、ルドルフに代表される宝塚の正統派男役を研究して真似すれば、婚活もうまくいくんじゃないか、と思うんですが、どうなんでしょう。極論でしょうか……。

 同僚の男性医師には、『婚活マニュアル』のほかに『うたかたの恋』のDVDも無理やり貸しちゃおう……と密かに目論んでおります。でも、現実の男性に「熱く熱く熱く求め続け……」と言われたら、一瞬引いてしまうのかも。うーん、加減が難しいですね。それとも、ルドルフみたいに真剣な眼差しで語りかけてくれたら、違和感など吹き飛んでしまうのでしょうか?……い、いけない! そもそもそんなこと語りかけてくれる人をこそまず探さなきゃなのに……うっかり一瞬妄想に逃避してしまったwojoなのでした。

wojo(ヲジョ)
 都内某病院勤務のアラフォー女医。宝塚ファン歴20年で、これまでに宝塚に注いだ“愛”の総額は1000万円以上。医者としての担当科は内科、宝塚のほうの担当組は月組。

 以前からお世話になっている女医さんが最近、宝塚ファンになりました。きっかけは昨年wojoがお誘いした宝塚の舞台観劇だったのですが、そこから独自に好きなスターさんを見つけられ、ズボズボとはまってこられました。当初wojoは『源氏物語』で若紫を育てる光源氏のような気持ちで、wojoが好きな公演のDVDをお貸しし、wojo好みの宝塚ファンに育て上げようという気持ちでおりました。しかしその女医さんは今や、好きなスターさんが出られる舞台であれば、毎週末、宝塚や大阪にお一人で遠征されるまでに進化され……。もはや谷崎潤一郎の『刺青』の彫り師の気分です。Wojoを軽々と凌駕され、wojoはあっという間に女医さんにとって単なる肥料のような存在に成り下がりました。そしてまだ細々とDVDをお貸し続けております。宝塚ファンとして成長する肥やしにしていただくために……。でもいいんです、宝塚の繁栄につながるのであれば、喜んで肥料になります!

真琴つばささま&檀れいさまが歌う「うたかたの恋」に 母性本能をくすぐる男性の“弱さ”を学ぶのページです。おたぽるは、その他演劇の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!