「飽和しつつあるアニメソング業界でいかに生き残っていくか……」苦悩の果てに生まれた川田まみニューアルバム『PARABLEPSIA』インタビュー【前編】

──ベストアルバムのライナーノーツでも「脱皮曲」と語っていましたよね。

川田 うん。実際、今回のアルバムは「Borderland」を軸に作っているんですよ。デビュー前の「空の森で」(アニメ『おねがいティーチャー』ED)みたいなまったりした曲があって、デビュー曲「radience」みたいにエレクトロな曲があって、ロックな「JOINT」「No buts!」みたいな曲があって、という具合に色々な波があった中で、「Borderland」はまたちょっと違った私らしさが出せたという自信を持てた曲だったんです。エレクトロサウンドとロックが、私を軸につながっている感じの曲で、今回はこの曲でバランスをとりながらアルバムを作ってみようと思ったんです。

──先ほど、今後の活動に対する不安があったという話が出ましたが、「川田まみ」というシンガーの音楽性を明確にしないと消えてしまう、という危機感はありましたか?

川田 それは今でもあります。どんなアーティストも音楽性を持っているとは思うんですが、自分も自身の音楽性で勝負できるようにならないといけないと思います。これまでの10年間は、本当にタイアップ作品に助けられてきたと思いますし、いまだに助けてもらっているからこそ、ファンの方にも自分を認識していただけていると思います。もちろんそういう作品たちのことはリスペクトしているし、ファンとして関われていることはすごく嬉しい反面、もっと音楽人としてちゃんと自分のサウンドややりたいことの芯を見せないといけないとも思っています。10年もやっているんだし、「なんとなくこうなんです」とか「こういうのが好きなんです」じゃなくて、あらためてディープに「自分はこういう音楽をやるんだ」という意志をみんなに見える形で提示していかなきゃいけないなと。今回のアルバムでは、そういうことがある程度かなえられたんじゃないかな。

■本当の意味で「1枚目のアルバム」といえるものができた

1003kawada03.jpgニューアルバム『PARABLEPSIA』ジャケット

──歌詞を見ても、今回は一本の芯の通ったテーマで統一されていますね。

川田 それは意識しました。ここ最近の伝えたいことが色濃く出ちゃったなという感じもあるんですが。今までのアルバムって、クリエイター陣と私のバラバラな個性が集まってできた曲がたくさんあって、川田まみとI’ve SOUNDというキーワードだけを軸に一枚を作っていた感覚もあったんです。でも今回は、今までよりもずっと濃厚にコンセプトを打ち立てて、私が伝えたいことを掘り下げて「川田まみの完成形、集大成はこれ!」っていうつもりで作ったんです。逆に言うと楽曲の世界観を絶対に統一させる、というのが今回の狙いでもありました。

──そのほか、アルバムの制作スタイルについて、これまでと変わったところはありますか? 

川田 今回アルバムを作るにあたって、スタッフと毎週のように集まって打ち合わせをしつつ、チームの意志を統一するようにしたんです。そのうえで、私の方からは「Borderland」を軸にしたいことから、『PARABLEPSIA』というタイトルに至るまで提示させてもらいました。I’ve のクリエイターも、今回は私が中心になってやっていこうというふうになったのが大きいですね。
 さっきの話とも少し重なるところがあるんですが、I’ve ってオールスターチームみたいな側面があって、基本的にチームプレーの集団なんです。クリエイターがいて、私をどういうふうに売っていくか戦略を立てるプロデューサーがいて、私は歌詞と歌で表現して一つの形にする。そういう役割分担があって、それぞれ別々の動きをしているんだけど、最後になんとかまとまっちゃう。それがI’ve のいいところだと思っているんですけど、今回はもうみんなでひたすら集まって結束する。チームプレーをあらためて確認しながら進めるという作業をしたんですよ。本当にみんなで相談しつつ「川田まみ」を構築していった感覚があります。だから、今回のアルバムは「これが川田まみの1枚目のアルバムです」と言ってもいいくらい、やりたいことが形になった実感がありますね。

──10月には全国6ヵ所7公演のライブツアーが始まりますが、今回のアルバムの世界をどうステージで表現するのか楽しみですね。

川田 まだ、どうなるかわからないというのが本音ですね。気持ちの上では私のすべてを見てもらえるライブにしたいし、『PARABLEPSIA』という作品の世界観を感じてもらえるライブにしたいですね。ただI’veのサウンド自体が打ち込みが多いスタイルなので、これをどうライブに落とし込むのか。これが目下の課題です。どんなサウンドに仕上がっているのか、楽しみに待っていてください!

 メジャーデビュー10周年に、あらためて1stアルバムのような意気込みのアルバムを完成させた川田まみ。インタビューに答える彼女の表情も、どこか自信に満ち溢れたものだった。そんな意欲作について、後編ではセルフレビューという形でさらに切り込んでいきたい。
 乞うご期待!!

取材・文:有田シュン(シティコネクション)

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