なんだ、このマンガは? 窓ハルカ『俗の金字塔』(リイド社)は、作者にとって初の単行本となる短編集。いわゆるガロ・アックス系のジャンルになるであろうこの作品は、容易に人に勧めることはできないであろう。
表題作「俗の金字塔」をはじめとする作品で描かれるのは、微妙にモラルのずれたシュールな世界観である。
表題作のストーリーを、出版社が書いたであろう帯や書籍紹介では「容姿端麗な変わり者ゆかりと、その恋人の野中雪夜、野中への恋路の途中でゆかりへと心変わりした後輩女子の美咲……」などと記している。
確かに、そのようなストーリーが展開しているのだけれど、果たしてストーリーが面白いのかと問われたら、首をかしげてしまう。シュールな登場人物たちと物語の展開は、ギャグともシリアスとも異なる越境的な面白さを放っている。
でも、それは作品を構成する単なるパーツに過ぎない。あくまで作品全体を通して考えるのではなく、感じることができるかどうかが、この作品を面白いと思うか否かのキモなのである。
つまり単行本は、論理的に面白さを説明することができない。「面白い」というパトスを感じたかどうかの体験を語ることしかできないのだ。そもそも、書店に並ぶ数々の単行本の中から、この本を手に取った時点で作品の持つなんだかよくわからない面白さを感じ取っているといえるだろう。
このマンガをもし「面白いから、ぜひ読むべき」と勧める人がいるとすれば、その人はマンガに対する素養の少ない人だろう。一見しただけでは決して面白い作品には見えない。絵は独特かつ、少々デッサンが狂っているし、一度読んだだけでストーリーを完全に理解することなどできない。
そうした意味で、この作品は究極のマニア向けマンガといえるだろう。
しかし、作品以上に作者の窓ハルカは謎多き人物である。この類のねじくれたサブカル的作品の作者は大抵は、あとがきになんだかよくわからない哲学的なことを書くように思う。ところが、窓ハルカは「直前にやっていた『CLANNAD』の坂上智代をイメージしています」なんて記しているのである。サブカル的にオタクにすり寄っているのではない。根っからのオタクなのに、内面に広がるのはオタク的世界観とは違う異様なものだったのか……。
いったい、これからどんなマンガ家となっていくのか? まったく予想がつかない奇才といえるだろう。
(文=是枝了以)
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