Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第34回

ノストラダムスの大予言が期待値を上げた!? 「変態の人殺し」であるラスボスに感情移入した『ジョジョ』第四部

■好きなキャラクターが多すぎる! 泣かせどころもある第四部

『ジョジョの奇妙な冒険』というタイトルは、“奇妙”という言葉が入っているのがとても特徴的だ。

 “奇妙”という言葉の入った作品には、もう一つ『世にも奇妙な物語』という人気作品があるが、『ジョジョ』第四部は雰囲気が近いなと感じる。

 杜王町という舞台のどこかで、人知れず今日も奇妙な出来事が起こっている。そんな今までのジョジョシリーズにはない、独特な味わいがあった。

 第三部とは違い、第四部には目的がないので、登場するキャラクターもモチベーションがバラバラである。
 
 第四部で、主人公的エピソードが多かった広瀬康一や、最強のスタンド能力を持ちながら馬鹿なのでそれほど生かしきれない虹村億泰は、学生なので基本的には毎日学校に通って、レストランやカフェでお茶したり、恋愛したりしている。

 いまだにスピンオフされる人気キャラクターに成長した、マンガ家・岸辺露伴も基本的にはスタンドアロンなキャラクターで、なにより主人公仗助とは徹底的に仲が悪い。

 さらに、戦闘の能力を持たないトニオ・トラサルディーや、辻彩がいるのも第四部ならではだ。

 さほど出番は多くなかったが、噴上裕也もとても好きなキャラクターだった。自分の身体を治すという、敵っぽくないモチベーションもよい。

 ちなみに、岸辺露伴の名言

「だが断る」

 を言わせたキャラクターだ。

 噴上裕也が出ていないという理由でバンダイナムコゲームスの『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』を買わなかったのは、僕だけだろうか?(世界に5人くらいはいるんじゃないか?)

 ヌ・ミキタカゾ・ンシも好きだし、山岸由花子もミザリー的でよかったね……なんて、ほうっておくといつまでも書き続けられてしまう。

 そんな魅力的なキャラクターが目白押しの『ジョジョ』第四部だが、最も好きなキャラクターはラスボスの吉良吉影だ。

 彼は、最初からラスボスだったわけではなく、書き進めるうちに結果的にラスボスになったキャラクターだと思う。敵ボスキャラクターというのは、主人公以上に大きな野望を抱きがちである。例えばDIOは不老不死になって、世界を支配しようとしていた。とても大きい野望だ。

 吉良吉影の野望は「人を殺さずにはいられない性を持ちながら、それでも平穏無事に生きること」である。
 
 前半部分はともかく、後半は多くの人が願う、とても当たり前の望みだ。それがとてもいい。

 あまり語られないが、幼少期から自分の性癖でとてもつらい思いをしたであろう事が汲み取れる。それでも前向きに生きて、普通に寿命をまっとうすることを夢見ている。

「変態の人殺し」というどうしようもない人格の持ち主だが、とても感情移入ができた。

 ラストバトルは、主人公の仗助との一騎打ちになる。この死闘は、本当に面白い。バトルに入るまでの展開もサスペンス調でよかったし、バトルも緊張感があってよかった。読んでいない人のために多くは書かないが、バトルの後半戦の“ガオン”のくだりは本当に泣けた。当時も泣いていたし、今も泣いている。

 そんな第四部だが、読むたびに気になることがある。

『ジョジョ』第四部には、ジョセフ・ジョースター、空条承太郎、東方仗助、と3人のジョジョが登場する。そもそもジョセフ・ジョースターが日本に来日したのは、居場所不明のスタンド使い・音石明の場所を探すためだった。

 細かいことを言うと、第三部の時、日本でハーミット・パープルを使い、エジプトにいるDIOの居場所を突き止めたのだから、今回もわざわざ来日しなくてよかった気がするが、でもまあ、これは子どもである仗助に会いたいとか、歳をとってスタンド能力も衰えたとかあるかもしれないので、大目に見る。

 ただ、いただけないのは、後半戦の一番大きなミッション「吉良吉影の居場所を探す」に関しては、どう考えてもジョセフ・ジョースターのスタンド能力を使うのが最適じゃない? と思ってしまうのだ。

 結局ジョセフは、ハーミット・パープルをほとんど使ってない。

 な〜んて、理屈っぽいことを考えてしまうのも、本当に何度も何度も読んでいるからなのです。ああ、なんか、すいません。

●村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。近著に、マンガ家の北上諭志との共著『デビルズ・ダンディ・ドッグス』(太田出版)、『ゴミ屋敷奮闘記』(鹿砦社)。
●公式ブログ<http://ameblo.jp/rumrumrumrum/

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