Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第34回

ノストラダムスの大予言が期待値を上げた!? 「変態の人殺し」であるラスボスに感情移入した『ジョジョ』第四部

ーー今から30年前以上前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

150828_rum.jpg(イラスト/村田らむ)

 ジョジョファンに聞いてはいけないのは、「『ジョジョの奇妙な冒険』で一番好きなの、何部?」という質問じゃないだろうか。

 第一部がなけりゃ始まらないし、第二部のジョセフも大好きだし、第三部の「スタンド」(持ち主の傍に出現し、さまざまな超常的能力を発揮する守護霊のような存在)という発明はマンガ史を変えたし……。なんて、喧々諤々、結論が出ることは永遠にないだろう。

 もちろん、僕も右に同じくなのだが、もしも「一番繰り返し読んだのは何部?」と聞かれたら、これは間違いなく第四部だ。

 Kindleでも、この連載が始まる前に、自主的に買っていたのが第四部である。

 承太郎とDIOの壮絶な戦いで第三部が終わり、間髪を入れず、第四部が始まった。舞台は1999年の日本、M県S市杜王町である。99年というと、もう16年も前なので、「第四部ってずいぶん前の作品なんだな〜」と思うかもしれないが、連載が始まったのは92年。当時は、7年後の未来を描いていた。つまり連載していたのは、23年も前なのだ。

 当時の僕は、大学2年生という、人生で一番ダランとしたモラトリアムな時期だった。映画研究部に入っていて、部室に行くと誰かが買った「週刊少年ジャンプ」(集英社)が置いてあった。

 ちなみに92年当時の「ジャンプ」は、『ドラゴンボール』『幽遊白書』『SLAM DUNK』『ろくでなしBLUES』『新ジャングルの王者ターちゃん』と、人気作品多数の、いわゆる“黄金期”だった。

 ただ、この時の『ドラゴンボール』はセル編に突入し、ちょっとダレた雰囲気になっていたのは否めなかった。ほかの人気連載も長期連載になり、世の中の何の役にも立っていない映画研究部員たちは偉そうに、「ジャンプもそろそろ終わりだよな〜」なんて陰口を言っていた頃だ。

 そんな時に始まったのが、『ジョジョ』の第四部である。新しいシリーズが始まるのは嬉しいけれど、やはりちょっと不安もあった。今の10代の人たちは感覚として理解できないだろうけど、20世紀末だったあの頃は、なんとなく「1999年に世界が終わるような気がする」という、漠然とした思いが充満していた。それは、流行りに流行った、ノストラダムスの「1999年7月、空から恐怖の大王が来るだろう」という予言に端を発している。同時に、1989年まで続いた米ソの冷戦の影響で、一歩間違えれば大陸間弾道ミサイルが降ってくる……そんな雰囲気だった。数年後に世界が滅んじゃうのは嫌だという不安感と、みんな同時に滅びるならいいやという変な安心感のどちらもあった。

 そんな中、『ジョジョ』の舞台が1999年になったという事で、みんなは口々に「こりゃ第四部のラスボスは、カーズ(第二部のラスボス・究極の生命体になった後、火山の爆発で宇宙にふっとばされた)が、宇宙から降ってくるな!!」と話していた。

 この予言は、当たらなくて本当によかったと思う。第四部のラスボスである吉良吉影は、世に数多いる敵キャラクターの中でも、僕が最も好きなキャラのひとりなのだ。

 第四部の主人公は東方仗助、高校生である。第二部の主人公であるジョセフ・ジョースターの息子であり、体格や顔は今までジョジョの流れをひいている。その外見の一番の特徴は、リーゼント。リーゼントなんて、当時すでに過去の遺物だったのだが、荒木飛呂彦の描くリーゼントはとてもかっこよかった。とても気持ちいい質感だ。

 そして、仗助は普段は馬鹿で気の良い高校生なのだが、ヘアスタイルについて悪口を言われると、猛烈に切れる。

 仗助のスタンドは、クレイジー・ダイヤモンド。壊れた物を治すことができるという特徴を持っていた。ただし、自分の肉体の損傷は治せない。ロールプレイングゲームで言うなら、ヒーラーのポジションである。
 
 とはいえ、スタンド能力はそのスタンドを持つ人間の特質が出る。物を治すというとても優しい能力を持つ主人公、というのがなんとも意外で、見ていてとても楽しいキャラクターだった。

 前回、「第三部から主人公以外のキャラクターも活躍するようになった」と書いた。第四部も、第三部以上にさまざまなキャラクターが出てくる。

 ただ、第三部と違い、第四部には「DIOを倒す!!」というようなハッキリしたフラグがない。

 物語冒頭、第三部の主人公である空条承太郎は、第二部の主人公である、ジョセフ・ジョースターの念写によって判明した「杜王町に凶悪犯罪者がいる」という事実を、仗助に伝えたが、その凶悪犯罪者はすぐに倒してしまう。

 その後、音石明というボスっぽいキャラクターが登場するが、物語前半に倒してしまう。そして、杜王町という街で起こる、スタンドにからんだ事件が単発的に語られていく。

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