不気味すぎる『シンプソンズ』の街並みに目を奪われる! 親しみのある場所を“暗黒”に変えるアート作品の数々

1509_simpsons.jpg『Artist Tim Doyle Illustrates The Creepy Side Of The Simpsons』より

 子どもの頃にテレビ画面で親しんでいたアニメやドラマの世界に登場する街の光景――。見れば幼少期の幸せな記憶と共に懐かしさを覚えるものであったりするが、よく見るとこれは少し(かなり!)違うという、ちょっとダークでアーティスティックな“リスペクト”作品が話題だ。

■慣れ親しんだ場所が不気味な光景に

 米・テキサスを拠点に活動するアーティストで版画家のティム・ドイルが描くテレビで有名な街の数々は、観た者を少しばかり動揺させているようだ。同アーティストのサイト「Mr Doyle」などで彼の作品群の一端を垣間見ることができる。

 例えば人気長寿アニメ『シンプソンズ』の舞台となる架空の街・スプリングフィールドはアメリカの典型的な郊外の街という感じだが、街の夜景を見下ろすアングルで描かれたイラストではなんと、丘の上の原子力発電所で火災が発生しているのだ。もうもうと煙を立ち上らせて燃え盛る街の一角を眺める少年の姿も背後から描かれており、いったいこの後どうなってしまうのかと胸騒ぎさえ覚えるほど不穏なイラストだ。

 他にも街の中で見慣れた建物である教会や、スーパーマーケット「Kwik-E-Mart(クイックEマート)」、大衆酒場の「MOE’S(モーズ)」、ハンバーガーショップの「Krusty Burger(クラスティバーガー)」などが不気味な夜空の下、殺伐としたタッチで描かれている。まさに“暗黒”のシンプソンズの世界である。

『シンプソンズ』ばかりではない。『千と千尋の神隠し』の温泉旅館「油屋」や、『トイ・ストーリー』の「ピザ・プラネット」も実に薄気味悪く描かれており、さらに実写映画では『パルプ・フィクション』の「ワックスミュージアム」や、『ハリー・ポッター』の「ホグワーツ城」、『ロード・オブ・ザ・リング』の「ホビット村」など、有名なアニメやドラマの舞台で登場する“物件”が、次々と彼のリスペクトを通じて不気味に再現されている。親しみのある世界観に不穏なものが同居している作風で、これら“原作”の世界に親近感を抱いているファンほど、心穏やかではなくなるのではないだろうか。人間に似せた人形やCGやロボットが不気味に感じられる“不気味の谷”現象の不動産版(!?)かもしれない。思わず魅入ってしまう作品の数々だ。

■“マッシュアップ”や“リスペクト”でアーティストの新しい生き方を提案

 アーティストのティム・ドイルは現在テキサス州オースティン在住だが、サイトのプロフィールによればもともとはダラス郊外で育った典型的なアメリカのサバービアン(郊外生活者)で、子どもの頃は家の中でコミックスを読んだりテレビを見たりビデオゲームで遊んだりと、例にならって完全にインドア趣味の幼少時代を過ごしたということだ。

 しかし1999年にダラスを出たいという積年の夢の実現に踏み出し、実家を離れてオースティンへ“上京”し、絵画の創作活動をはじめると共にアルバイトをしながら自費出版のアート雑誌『Amazing Adult Fantasy』を2001年から2003年にわたって発行。その後2004年からアートギャラリー「MONDO」でアートディレククターを務めた後、2009年に自身の会社「Nakatomi Inc」と、友人のアーティスト、クリント・ウイルソンと共同で版画スタジオ「Nakatomi Print Labs」を設立して今日に至っている。

 他のアーティストと協力しながら版画スタジオを運営し、また数々の“リスペクト”作品をネットなどを通じて販売しており、アーティストの新しい生き方を提案できるポジションにあるようだ。

 東京五輪を前に日本では何かと騒がしい商業アート業界であるが、このドイル氏などのように予め“マッシュアップ”や“リスペクト”を掲げて創作活動を行なえば、問題なくそれぞれのアーチスト活動が続けられるという“生きた見本”かもしれない。商業アートの世界ではオリジナル創作がますます難しくなっていそうな感もある今日、このドイル氏のような独創的な“リスペクト作品”はますます注目を浴びそうである。
(文/仲田しんじ)

【参考】
・Smash
http://www.smash.com/dark-side-springfield-artist-tim-doyle-illustrates-creepier-side-simpsons/

・Mr Doyle
http://www.mrdoyle.com/

不気味すぎる『シンプソンズ』の街並みに目を奪われる! 親しみのある場所を“暗黒”に変えるアート作品の数々のページです。おたぽるは、その他ホビーの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!