『異世界ならニートが働くと思った? エルフの姫を奴隷にして世界を支配させます。』(刈野ミカタ)ニートかと思ったらチートだった! 

『プシュケープリンセス』(MFJ文庫)をはじめとした作品で知られる人気作家・刈野ミカタの新作『異世界ならニートが働くと思った? エルフの姫を奴隷にして世界を支配させます。』(MFJ文庫)は、タイトルからしてオカシイ作品である。もはや定番となった作品内容への想像が膨らむ妙に長いタイトル。それを逆手にとって、読者を驚かせてくれるのだから、技巧に優れた作家(いや、編集者が優秀なのかも?)といえるだろう。

 すでにいくつかのシリーズを手がけ、ベテランという域に達している作家であるし、電撃文庫に追いつけ追い越せで頑張っているMFJ文庫だけに、読者を驚かせるためのギミックには事欠かない。

 カバーに記されたイラストやあらすじから展開を想像しつつ表紙をめくると、口絵でいきなり紐みたいな服を着たロリ少女が描かれているではないか!

 おわッ、これはサービスシーンも満載な話かと思って本編に入ると、冒頭からライトなお色気が炸裂してくる。主人公・崩喰レイジは森霊族(エルフ)の姫・ティファリシアに首輪を装着させてマッサージさせているんだから。この時点で、どんなサービスシーンが登場するのかとドキドキ感は止まらないだろう。中高生ならいざしらず、たとえ20代、30代いや40代になっても、こうしたライトなエロスにドキドキしてしまうのがラノベユーザーなのである……多分。

 さて、物語の世界観は異世界に古今東西の人間界の英雄達が召喚されて、異世界の住人の代理で戦うという最近人気のテイストである。じゃあ、主人公である崩喰レイジの役割はといえば、英雄枠で召喚されたのに単なるニートな高校生。高校に行っているならばニートじゃないと思うだろう。でも、レイジはニートなのである。

 フォントサイズをでっかくして「ようするにニートってのは精神なんだよっ!!」と、叫ぶくらいの一人前のニートなのである。

 舞台となる異世界「万象の楽園(アクアテラリウム)」というところは、エルフのほか海精族(シーレーナ)やら獣妖族(ベスティア)といった種族が異世界から招いた英雄を用いて戦争している世界である。ほかの陣営はといえばナポレオンや太公望が召喚されているのに、ティファリシアが召喚したのは単なるニートだったのだ。

 こんなクズが、どんな方法で降りかかる問題を解決していくのか。まさか、ラッキーだけで万事解決なのか? と思いきや、物語の前半ですごい事実が明かされる。

 レイジは人間界では、世界の公共機関を数十時間停止させたり、理由もなく紛争を終結させたりした、綿密な人間考察と会話術だけで、すべてを手のひらで踊らせる「好ましき隣人(ソーシャルハッカー)」だったのだ。

 いや、ニートかと思ったらチートなのである。チート過ぎる能力を用いて展開するのは、綿密な頭脳戦。そして、随所に挿入されるサービスシーンなのだ。ニートも一人前になれば、こんなことができるのか! そんなわけないと自分でツッコミながら読むことができるだろう。いや、最後まで読んだ人は作者にソーシャルハックされているのかもしれない。
(文=是枝了以)

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