孤高のヒーロー“デビルマン”を引き継ぎし男、浅沼晋太郎インタビュー

asanuma01.jpg浅沼晋太郎(撮影/安藤沙也加)

 石ノ森章太郎『サイボーグ009』、そして永井豪『デビルマン』。日本が世界に誇る2人のマンガ家の代表作がスクリーンで激突! 
 異色のコラボで話題になった『サイボーグ009VSデビルマン』だが、実は永井豪が若手だったころ、石ノ森章太郎のアシスタントを務めていたという過去もあり、加えて「異形・異能のヒーローながら人間の心を持つ」という共通点もあるこの2作品。決して、ただ有名作2本をくっつけただけではないのだ。
 10月17日(土)の上映開始もいよいよ近づいてきたが、それぞれ強烈な個性を放つだけに、PVや予告映像を見ても“共演”にピンとこない読者もいることだろう。そこで日本が世界に誇る名キャラクター・不動明/デビルマン役を演じた、浅沼晋太郎氏に本作の見どころと心境を語っていただいた。

―― そもそも『デビルマン』、『サイボーグ009』にはどんな印象を持っていましたか? 

浅沼晋太郎(以下「浅沼」) まず『デビルマン』に関して言えば、OP曲は知っているし、キャラクターも知ってはいましたけど、突っ込んだ内容、物語までは詳しく知らなかったんです。おそらく幼いころに観ただけで、細かいところまでは覚え切れていなかったんでしょうね。10代後半ぐらいになってから、改めて原作マンガを読んで、「うわっ、こんな話だったんだ!」と、ショックを受けました。強烈でしたし、アニメのデビルマンは原作マンガをそのままアニメ化したわけではなかった、ということもその時に認識しました。『009』に関しても、歌とか各キャラクターの能力までは知っていましたが、物語を把握したのは、やはりそれなりの年齢になってからです。あと、個人的に主人公が仲間とチームを組むような作品が好きなんですよ。映画で言えば『007』シリーズよりも『ミッション:インポッシブル』シリーズ。『仮面ライダー』シリーズで言うと、スペシャルのときに先輩ライダーたちが助けにきてくれる展開が子どものころから好きで、興奮していた記憶がありますね。

※TVアニメ『サイボーグ009』は1968年、79~80年、2001~02年と3度TVアニメシリーズ化。『デビルマン』は72~73年、派生シリーズの『デビルマンレディー』もTVアニメ化されている。

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――今作は名作の主人公2人が激突します。ライダーたちが集結するのにも似たお祭り感がありますね。

浅沼 今回はそれ以上かもしれませんよ。何せ原作者の先生も違うわけですから、先輩ライダーが助けにきてくれる展開とは、越えなきゃならない壁の高さが違いますよね。『デビルマン』と『009』だと世界観といいタッチといいだいぶ違うので、よくコラボできたな、と思いました。『ウルトラマンVS仮面ライダー』ぐらいのインパクトというか(笑)。誰しも、最初に聞いたときは「えっ?」と驚かれたのではないかなと思います。

――不動明/デビルマンを演じられます。原作マンガや歴代のアニメといろいろな不動明/デビルマンがいましたが、改めてどんな印象をお持ちだったか、教えてください。

浅沼 そうですね……いわゆる変身ヒーローのイメージを持っていたんです。アニメ版の主題歌にも「正義のヒーロー」という歌詞がありましたし、不動明からデビルマンになるというのは、やはり「変身」のイメージだったんです。ところが今回このお話をいただいてアニメを見直したとき「あ、デビルマンになっても、そこまで野獣的な変化はしないんだ」と気づきまして。

asanuma03.jpg本作での変身シーン。確かにハードめな印象

――イベントでも一緒に登壇された、田中亮一さんが演じていたTVアニメ版の『デビルマン』ですね。

浅沼 はい。でも最近のフィギュアなどを眺めると、TVアニメの時よりもビジュアルがより“デーモン”らしくなっていて、グロテスクだったり、ハードな印象になっています。今作のデビルマンをはじめ、最近の『デビルマン』は、姿形は悪魔という部分がかなり強調されているのではないかと。ですから、今回のお話をいただいて、不動明からすごくワイルドで野獣っぽさのあるデビルマンへと姿が変わったときに、不動明のトーンを保って演じてしまうと違和感が出てしまうんじゃないかな、と考えました。石ノ森先生といえば代表作に『仮面ライダー』がありますけど、『009』には変身シーンがない。だから変身という要素を、デビルマンサイドが請け負ったと勝手に解釈して(笑)、演じました。

――試写を見ましたが、確かに雄々しくて、野獣っぽい荒々しい声ですけど、デビルマンならではの悲しみというか重さみたいなものを感じる演技だったと思いました。その辺もやはり意識された部分だったんでしょうか?

浅沼 そう聞いてくださっていたのなら、嬉しいです、ありがとうございます。デビルマンはいわゆるダークヒーロー、悲しみを背負ったヒーローなので、どこかにそういうものを残さなければ、と思っていたんです。ちょっと前の海外ヒーローたちは、悲しみを背負っていながらも、カラッとしていて恋に悩んだりしていましたが(笑)、最近の海外ヒーローも「業」というか、影を背負っているヒーローがまた増え始めましたよね。そっちのほうがヒーローには似合うと思っているんですよ。もしかしたら昭和の考え方といわれるかもしれませんが(笑)。

――対決する『009』側のキャラクターたちの印象はいかがですか?

浅沼 『VS』って言ってるけど、共闘するんだろうなと(笑)。

――(笑)。まぁ、大体の『VS』ものはそうですよね(笑)。

浅沼 特撮ものの『VS』なども、大抵は共闘しますよね。でも『サイボーグ009VSデビルマン』は、1話目からしっかり、島村ジョーとデビルマンが拳を交えるシーンがあります。そこは驚きましたね、『VS』とついて本当に対決するのは『エイリアンVSプレデター』や『フレディVSジェイソン』ぐらいだろうという印象がありましたけど(笑)、ジョーもデビルマンも見応えあるアクションを繰り広げますから、まずはそこを期待してほしいです。

――この2作が同じ土俵に立つところを想像しづらかったのですが、1話目を見ると、意外としっくりきていたように感じました。

浅沼 お互い、異能の力を持っているからでしょうね。それに石ノ森先生も永井先生も、変身するヒーローを描いてきていますから、そういうところで通じるものがあったのかなと……思ってもみなかったなじみ具合で、“水と油”という感覚が全くありませんでした。

――ちなみに興味本位な質問ですが、『009』は9人プラス博士の10人で、ワイワイ会議をやったりしているのに、『デビルマン』チームは3人。寂しくなかったですか?

浅沼 そりゃ寂しかったですよ!(笑) でも、それがこの2作の一番の違いですから。さっきも触れましたけど、個人的にはチームを組むヒーローが好きで、それが『009』が好きな要因でもあるんですけど、チームを組んだスタイリッシュな連中と、孤独でワイルドなキャラクターとの対比がしっかり描かれているのがすごいし、一緒に描かれてもどちらかがぼやけるわけではないというのが、この『サイボーグ009VSデビルマン』のいいところではないかなと思います。

――アニメや実写版映画など、過去にデビルマンを演じられた方たちの演技を意識された部分はありますか?

浅沼 もちろん見させていただきましたが、キャラクターのデザインから違いますから、あまり従来のキャラクター像に囚われないでいようと考えていました。ですから変身した後で、声質やトーンを変えたりもしたんですけど。ただ“昭和感”というのは出そう、とは意識しましたね。

――作品の歴史や引き継いでいるんだぞと。

浅沼 そうですね。加えて、例えば第1話の冒頭に不良たちが出てきて、引ったくりを働くシーンがあるんですが、それがおよそ今のTVアニメでは出てこないような、昭和を感じさせるキャラクターなんです(笑)。以前のTVアニメに出てくるようなキャラを、スタッフさんたちが意識されたんだと思います。『009』チームはすごくスタイリッシュですけど、いやいや、それだけじゃないぞと。『デビルマン』は昭和を感じさせる方向で行くぞと決意を新たにしました(笑)。

――過去シリーズからのファンたちを大事にされているんですね。

浅沼 それはもちろん。『009』、『デビルマン』それぞれ昔から好きだった、子どもの頃から好きだったという方、そして今回初めて2作に触れてくださる方、皆さんに楽しんでいただける作品になっていると思います。ぜひ、このお祭りに心を躍らせながら参加してほしいです。

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■『サイボーグ009VSデビルマン』公式サイト
http://www.009vsdevilman.com/
(C)2015「サイボーグ009VSデビルマン」製作委員会

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