『“文学少女”シリーズ』をはじめ、独特の感性が光る野村美月『SとSの不埒な同盟』(ダッシュエックス文庫)。発売から1カ月ほど経ちましたから、ネタバレ問題なし! ということでレビューしていきたいと思います。
すでに巻末で次巻の発売も告知されている本作品で描かれるのは、3つのストーリー。物語の主人公・真田大輝は、まったく絵心も造形能力もないのに美術部に所属しています。その目的は、美術室から見える合奏部に所属する美園千冬を、気づかれないようにガン見して鑑賞することです。単に鑑賞するだけではありません。鑑賞しながら、千冬が意地悪されて困っている姿を妄想してハアハアしている……変態なのです。
そんな彼は自分の非公式な部活動を「鑑賞部」と名付けています。そして、同じく音楽室を眺める存在に気づきます。それは、金髪と青い瞳の美少女・藍本ルチア。彼女はバイオリンを鳴らす合奏部の気弱な少年・小笠原忍を見てハアハアしていたのです。ルチアのほうも「忍くんを監禁して、黒い鎖に繋ぎたい」とか願望を隠しきれない変態でありました。
共に好きな子に意地悪してハアハアするのを想像してしまうだけで興奮するドSな2人。そんな2人は、いつしかお互いの恋のために協力することになります。
けれども、忍は既に年上の彼女がいるということで、ルチアは失恋。そして、大輝も千冬に告白するのですが……なんと千冬も実は大輝のことが好きだったと言った途端、大輝は断ってしまうのです!
自分で告白しておきながら、どうなってるの! と思うでしょう。そう、共犯関係から大輝はルチアのことを好きになっていたんですね~。
でもね、お互いにSな嗜好。それも高校生にしては、かなり先鋭化した趣味を持っている者同士。ルチアのほうは、まったくその気がありませんし、思いに気づきもしません。
でもね、ラノベ……ジャンルとしてはラブコメですから、いろいろ事件があっても2人が付き合うことになるんだよね? と思いながら読んでいたのですが……まったくそうではありませんでした。
第2話で、ルチアは気弱な音楽教師に新たな恋をして破れます。そして第3話では大輝は、ルチアへの思いを断ち切れないまま、ちょっとドジな先輩とビーチバレーの大会に出場することになります。
このまま、どうやって大輝とルチアが憎からず思い合う関係になるなのかと思ったら、土壇場で再登場した音楽教師が、ルチアをかっさらい、それを見た大輝は先輩に告白して付き合うことになるんですよ!
なんですか! この展開はーーーーー−!
一度フッておきながら、再登場する音楽教師のメンタリティにもびっくりですが、大輝のほうも仕方なく……みたいな気持ちがあるんじゃないかと深読みをしてしまいます。
でも、続刊が告知されているということは、さらなる2人の恋の展開が描かれるわけですよね?
青春期ならではの、移ろいやすい恋愛を描く本作は、恋に恋する男女に人生を学ぶためにも読んでもらいたい傑作です。
やっぱり、2人は付き合わないままになってしまうのか? もう気になって夜も眠れませんよ。
(文=大居候)
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