冒頭から彼女が読んでいる本が、クリントン・リチャード・ドーキンスの著作『利己的な遺伝子』。素人の深読みは危険だが、本作のテーマに通じるものがあるのではないかと思わせるチョイスだ。少なくとも水貴のシニカルで現実的なものの見方に、しっくりくる本だと思った。
水貴のキャラクターは、簡単に言えば「ツンデレ」で、素っ気ない表情で相手を突き放す一方、時折可愛らしさを見せる。持田千妃来は、そのさじ加減を上手く表現していたように思う。持田自身にとっては、約一年ぶりの舞台出演ということだが、今後舞台での活躍が期待できると思わせる素晴らしい演技だった。
この舞台は、『アリスインデッドリースクール』の再演だが、筆者にとっては全くの初見。誤解を恐れずに言えば、観る前に持っていた先入観が大きくひっくり返える舞台だった。舞台が学校、ゾンビの存在というだけで、いわゆる「学園ホラーもの」の括りなんじゃないかと勘違いしていた。ところが実際の公演を拝見して、死生観についてまで考えさせる深い作品ということに気づかされた。生と死の間の存在ともいえるゾンビ、死に際の選択肢、人間にとって最も強い感情の一つであろう恐怖の感情、死への恐怖とどう向き合うか、欠くことの出来ない「相方」との関係、夢の大切さ、学校の屋上という狭い空間の中に、これでもかというくらい要素が放り込まれているように感じた。
もちろん、個々のキャストに惹かれて観に行くも良し、観方は人それぞれだと思う。筆者も観ているうちに、表情がコロコロと変わる栞菜の演技に惹かれ、取材を忘れて見入ってしまう瞬間があった。だが物語の奥深さに今一度立ち返ってみると、観終わった後の余韻がたまらない。いや、それが余韻なのか、心に空けられた穴なのか、未だよく分からない感情としてジワジワとして残る。全16公演。ダブルキャストや日替わりゲストの違いを見るだけでなく、今後、千秋楽までに一味もふた味も変化していくことを想像すると、再度訪れてみたいと思わせる作品と言えよう。
(文・写真/矢口 明)
■アリスインプロジェクト2015年8月公演
『アリスインデッドリースクール ビヨンド』
【公演日程】
2015年8月12日(水)~8月23日(日)
※全16公演(既に終了した日程については下記スケジュールに記載しておりません。)
8月
16日(日)13:00(風組)・18:00(光組)
17日(月)19:00(風組)
18日(火)~休演日~※イベント予定
19日(水)19:00(光組)
20日(木)19:00(風組)
21日(金)14:00(光組)・19:00(風組)
22日(土)13:00(風組)・18:00(光組)
23日(日)12:00(光組)・17:00(風組)
※開場は開演の30分前
【会場】池袋・シアターKASSAI
【チケット】
S席(指定席)5500円(最前列10席・ひな壇最前列9席)
A席(自由席)4500円(S席エリア以外の席)
Confetti(カンフェティ) http://www.confetti-web.com/detail.php?tid=30008&
Corich(こりっち) https://ticket.corich.jp/apply/66754/
にて、チケット発売中
【公式サイト】 http://alicein.info/
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