『繋がる個体』絶対に関わりたくない恋愛のド修羅場! エグすぎる人間模様に胸を締め付けられる…

 ページをめくるたびに、泥沼が底なし沼になって飲み込まれていく気分! エグすぎる人間模様に胸を締め付けられる思いになったのが「週刊モーニング」で連載中のマンガ『繋がる個体』(共に講談社)だ。

 物語は、三十路に入った男と女子高生の恋愛もの。といっても、同様の最近の話題作『恋は雨上がりのように』(小学館)とはテイストが真逆。『恋は雨上がりのように』は、ひたすらハートフルに心地よいファンタジーを見せてくる作品。対して、こちらは現実的かつ悪夢のような展開である。しかも、絵柄がほんわかしたタッチなので、余計にダークさが際立つのである。

 記念誌専門の出版社で働く30男・井口が、数合わせで参加した合コンで出会った女子高生・ここみと、酔った勢いで一夜を共にしたことから、物語は始まる。真面目な性格で、同じ職場の元カノ・くるみの存在を気にして5年間もイタしてなかった井口にとってはラッキーな出来事。かと思いきや、真面目な彼は「淫行」で人生が破滅するんじゃないかと、悩むばっかり。ここみからのメールを無視してやり過ごそうとしたのだが、創立百周年誌の仕事の打ち合わせで訪れた、くるみの母校で、ここみと出くわしてしまったのだ。

 ここで、このまま2人がカップルになるのだったら、凡百な作品だったろう。けれども、ここから物語は急展開、いや、超展開していくのだ。情緒不安定になってしまった井口は「オレジョシコーセーニチンコタタナイ」という妙なセリフを吐いて、くるみとベッドインしてしまう。元カノかつ毎日顔を合わせている相手とのセックスは、互いをよく知っているだけに気持ちよさもハンパないはず。でもね、この刹那の肉欲が波乱を生み出すのである。

 その次のページで、井口が知ることなく読者に提示されるのは、ここみとくるみが姉妹だったという事実。間違いなく待っているのは修羅場! 加えて、くるみは女子高生だった頃に付き合っていた教師と再会。「もう一度、付き合わないか」と囁かれる。

 かと思えば、井口も同じセリフをくるみに告げるのである。もうひとつおまけに、ここみにラブな高校の同級生まで登場し、物語は修羅場突入が秒読みの状態へ!

 わずか単行本一冊の中で、これだけの人間模様が交錯するジェットコースターぶり。しかも、その世界は異常に狭い。この狭さが泥沼ぶりをとことん際立たせていくのである。

 もう物語がどう展開しようとも、みんなが幸せになれることなんて絶対にない。誰かが破滅し、誰かが不幸になり、幸福を手に入れたと思ったヤツも、どこか心に影を背負った人生が約束されるだろう。きれい事などない、恋愛のド修羅場への人間模様が、これからどうなるのか。少なくとも、元カノへの未練は地獄への入り口だってことを心に刻んでおきたい。
(文/ビーラー・ホラ)

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