『PandoraHearts』9年間の連載に幕を閉じる!モブキャラなんていない 主人公や大人たちが成長するファンタジー

『PandoraHearts』9年間の連載に幕を閉じる!モブキャラなんていない 主人公や大人たちが成長するファンタジーの画像1左から順に『PandoraHearts』23巻24巻(スクウェア・エニックス/望月淳 )

 9年間かけてようやく完結したマンガ『PandoraHearts』(作:望月淳/スクウェア・エニックス)の最終巻、23・24巻が先ごろ同時発売された。特に24巻は、厚み2.5センチを超える力作になっている。2006年6月から月刊誌「Gファンタジー」において連載されていた本作は、2009年4月にはアニメ化も果たしている人気作品である。アニメ化の際は、「とにかく音楽(梶浦由記)が良い!」、「声優さんがぴったり!」という好評の反面、原作が未完だったゆえにアニメオリジナルの完結を迎えた結果、「最終回が無理すぎる」「謎だらけで伏線の回収ができていない」「途中でわけて2期を作れば良かったのに」という残念な声も聞かれた。賛否はともかく、それほど愛された作品だったからこそ、9年間も続けてこれたのだろう。

『PandoraHearts』のあらすじを、改めて振り返ってみよう。15歳になって成人の儀を迎えることになった、四大公爵家の一つ、ベザリウス家の次期当主・オズは、身に覚えのない「罪」で、アヴィスと呼ばれる地獄に落とされてしまう。おもちゃ箱をひっくり返したようなそこには「アリス」という少女がいた。意味のわからないまま彼女と「契約」してしまったオズだが、おかげで元の世界に戻ることができた。しかしそこは「あの日」から10年後の世界だった! レインズワース公爵家令嬢のシャロンと、その使用人のブレイクと再会し、「パンドラ」という組織に協力してほしいと言われるオズとアリス。自分の記憶を探しているというアリスは、嫌々ながらも記憶を取り戻すために協力するという。オズも自分の「罪」が何かを知りたいと言い、同じく彼らに協力することになるが……。

 ナイトレイ公爵家、バルマ公爵家と共に、アヴィスの核に近づいていきながらも、オズを狙うバスカヴィルの民と戦うアクションファンタジーで、「チェイン」という召喚獣のようなもので戦うバトルシーンは大迫力。『不思議の国(鏡の国)のアリス』をモチーフにしているチェインの設定は細かく、長い物語ゆえに数多く出てくるキャラクターもそれぞれ個性的だ。敵味方がぐるぐると入れ替わるが、最終的にオズの正体が明かされてからは、回想シーンの多い冒険活劇に変わる。身を呈してオズをかばう者、自身を偽ってまでそばにいる者、さまざまなキャラクターが、オズの素直で狡猾、しかし自分の信じた道を行く強さに惹かれていく。それは敵であるバスカヴィルの民までもを巻き込んでいくほどに──。

 筆者のイチオシキャラクターは、組織パンドラの上役でブレイクの友人のレイム! いろいろと裏のありそうな彼だが、一番の常識人で苦労人ゆえに振り回される姿は愛らしくもある。また、オズの使用人だったギルバートの鈍感さもかわいらしい。オズの命令は絶対で、弟のヴィンセントにも頭が上がらない、アリスには「ワカメ頭」呼ばわりされるヘタレだが、いざという時には必ず頼りになる男だ。オズが学校で出会うエリオットとリーオも、時にオズと敵対したり、背中を預けて守りあったりと、“男の友情”として泣ける部分を持っている。モブキャラのいない本作なので、数多いキャラクターを覚えるのは大変かも知れないが、きっとお気に入りの誰かを見つけることができるはずだ。

 ファンタジー作品であると前述したが、だからといってラストはそう都合良くはいかない。死んだ者は生き返らないし、なくなったものは戻ってこない。大きな哀しみを分かち合い、いつか芽生える希望の春を待ちながら、人々は前に進んでいくのだ。オズとアリスの成長だけでなく、大人たちの成長も垣間見える『PandoraHearts』は、時に胸の痛むマンガある。それでも最後まで読み終えずにいられないのは、やはり彼らが無我夢中で生き切った様を見届けたいからかもしれない。大人にも夢を与えてくれる、素晴らしいファンタジー作品だ。
(文/桜木尚矢)

『PandoraHearts』9年間の連載に幕を閉じる!モブキャラなんていない 主人公や大人たちが成長するファンタジーのページです。おたぽるは、漫画マンガ&ラノベ作品レビューの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!